個人や企業のコンサルタントを行う筆者が、彼らとかかわってきたなかで気づいた化粧品の力。それは、人生をシフトするきっかけにもなるほどのものだった⁉ 自分の人生、自分が主役‼ 次への一歩の背中を押してくれるストーリーをお届けします。
巷で話題の「顔採用」を宣言するってどういう意味?
「あっ、その眉マスカラ、ヘビーローテーションだよね。今日、大学の学食で話題になったんだよ、顔採用が…」
メイクしている私を注意深く見ていた娘がそう言った。2021年に卒業予定の彼女は、最近就職活動に敏感になっている。
キスミー ヘビーローテーション カラーリングアイブロウ(全8色 各¥800・税別/伊勢半)。
黒髪用だけでも3種類もある。04をずっと使用していたが、08も今回購入。
上の写真のヘビーローテンションは、江戸時代から続く伊勢半の展開するブランドである。
伊勢半本店は、文政8年(1825)の創業。江戸時代から続く最後の紅屋として、伝統の技術を継承し、「小町紅」はいつの時代も人々の暮らしを彩り続けてきた。
現在では、「キスミー フェルム」「キスミー 薬用ハンドクリーム」などのロングセラーシリーズに加え「ヒロインメイク」、「ヘビーローテーション」など時代に即した買いやすい価格帯のブランドをドラッグストアなどで展開している。
その伊勢半が”顔採用” を導入するという広告が、2020年度就活解禁日となる2019年3月1日、日経新聞朝刊に掲載された。歴史ある老舗化粧品メーカーが、「顔採用」を採用枠に加えるという話題は、twitterを駆け巡った。
最初にこの話を聞いたとき、私は「老舗化粧品メーカーが、結局は顔で人を採るとはどういうこと?」とネガティブに受けとった。
ところが娘の様子は全然違う。就職活動の話をすると嫌な顔をする彼女が、ウキウキしているではないか…。
そこで、私はまた要らぬことを考えた。
親しいヘアメイクのTさんにお願いして、娘にメイクをしてもらったら受かるんじゃないだろうか?
そんな私に娘から軽蔑の目線が注がれた。
「発想が昭和だね」と……。
就活メイクではなく、新しい姿を見せてください。
伊勢半の顔採用は、容姿で判断するということではない。
どうやら求められているのは、素顔を変えて2割増しに見せるという方向性ではないようだ。
伊勢半のコーポレートブランドである「キスミー」は、「私らしさを、愛する人へ」をブランドメッセージにしている。
その『私らしさ』とは何か?
それを考えた上で、メイクはもちろん服装でも、自分を表現してほしいということらしい。
この考え方は、私の先月刊行した「100歳までのしあわせ未来地図~ライフシフトマップ」の中で言っていることと同じだ。
私はこの本の5ページにこんな風に書いている。
『自分がどうしたいのか、何をやりたいのか、つまり、「自分とはなにものなのか」を知ることが必要なのです。でもそれは、頭で考えているだけではわかりません。自分の目ではっきり、見えるようにすることが大事なのです。』
江戸時代から続く伊勢半が、否定的な炎上も覚悟した上で、顔採用を宣言したことは挑戦である。インスタからエントリーでき、化粧品メーカーでありながら、メイクしなくてもよいと言い、男女は関係ないと断言した。
皆が不要と思いながら続けているスーツ就活メイクではなく、自分の最高の状態で面接に来なさい、という呼びかけ自体が、伊勢半のライフシフトだと私には思われた。
その意気込みやエネルギーは、学生を惹きつけ、私のような者にも改めて学ぶ機会を与えてくれる。
私のメイクの始まりは、高校卒業の時、街の化粧品店からだった。
その後は百貨店で購入するようになった。
今は、高級ブランドでも良いと思えばネットで購入、実際に見て気にいれば量販店でプチプラコスメも購入するという風に使い分けている。
化粧品業界自体、大きな変化の繰り返しで今がある。
そんな中、老舗化粧品メーカーの新たなる挑戦には、大いに触発される。
最新のテクノロジーのみを追求する化粧品メーカーもあるが、伊勢半は同時に、庶民の文化を支えていこうという力強さがある。それは江戸時代から積み上げてきた自社らしさを貫きながら、変革を果たしてきた自信である。
私も時代の変化と共に「自分はなにものか?」を問いかけながら、まずは自分らしさを愛して生きていきたい。そこからライフシフトははじまる。
文/井上野乃花(ライフシフト研究家)