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SKINCARE】【COLUMN

2020.03.23

「ニベア青缶とドゥ・ラ・メールの成分が同じ」伝説。それ、違ってます。

5年くらい前からネットを騒がせていて、効果がそんなに変わらないなら……と、つい思ったことも。

ニベアの青缶とクレーム ドゥ・ラ・メール、値段は大違いなのに、成分がほぼ一緒で効果が似ている」という噂を聞いたか、ネットで目にしたのは、4~5年くらい前のことか。当時、そんなわけないだろう、と思いつつも、もしふたつの効果がそんなに変わらなかったらおもしろいなと思った。だって、クリームという同じカテゴリーだもの、働きとしてはそう違いないだろうと思ったのが根拠。

果たして、どうなんだろうか。ビューティサイエンティストの岡部美代治さんに真意を確かめた。

岡部美代治 おかべ みよじ ビューティサイエンティスト・化粧品開発コンサルタント
岡部美代治 おかべ みよじ ビューティサイエンティスト・化粧品開発コンサルタント

アルビオン在籍中からさまざまな女性誌や美容誌で、科学的な知識に基づく的確でわかりやすいアドバイスが話題に。美容に携わる編集者やライターの厚い信頼を得て、取材に講演に人気。美容情報を発信する「ビューティサイエンスの庭」を運営。

成分表の3番目に記されているものが違う! これが乳化法、さらに感触の違いとなっているよう。

ドゥ・ラ・メールはみずみずしくなじんでいって、だんだん透明になっていく。ニベアはもったりと重たい油感があって、一度白っぽくなってからなじむ」と、ふたつのなじみ方の違いを説明してくれた岡部さん。

「これは、乳化法の違いじゃないかと思います」と続けた。そして、ふたつの成分表示を見比べて、「ひとつめとふたつめの成分は同じだけれど、3つ目が違う!」

どれどれ。ひとつめは水、ふたつめはミネラルオイルと、確かにそこまでは同じ。「ドゥ・ラ・メールは褐草エキス(アルゲエキス)で、ニベアはワセリン。この違いが感触の違いにつながっているんだと思います。他に配合されているものはそう変わりはない。その量、乳化方法が違うことが価格差になっている」と岡部さんは言う。

ところで、みなさんは成分表の見方をご存じだろうか? 

成分名がただ並べてあるだけではない。配合量の多い順から記されている。そう、食品や衣類と同じなのだ。

例えばカカオ含有72%をうたうチョコレートは、カカオマス、砂糖、ココアパウダー、乳化剤、香料といった具合。ほどよい伸縮性で着やすいTシャツは綿、ポリウレタンと表示されている。化粧品も食品も衣類も、配合されているものの配合率まで明記することは求められていないが、配合量の多い順に記すことは同様に決められているのだ。このことを踏まえて化粧品の成分表を見てみよう。クリームなのに水がいちばん最初にきていたり、その製品のメイン成分名がけっこう後の方にあったり。驚くことが多いだろう。

3番目に書かれた「アルゲエキス」これがドゥ・ラ・メールの肌へのなじみやすさの秘密。
3番目に書かれた「アルゲエキス」これがドゥ・ラ・メールの肌へのなじみやすさの秘密。

「ドゥ・ラ・メールは美容成分である褐草成分(アルゲエキス)が3番目に表記されています。つまり、量もそこそこ入っているということ。つまり、ドゥ・ラ・メールは美容成分の効果を最大に引き出すことを重視しているんだろうね」とも教えてくれた。

水、ミネラルはドゥ・ラ・メールと一緒。3番目のワセリンがニベアたる所以。
水、ミネラルはドゥ・ラ・メールと一緒。3番目のワセリンがニベアたる所以。

ニベアとドゥ・ラ・メールの成分は同じではないけれど、似ていると言えると思う。同じ食材を使っても、三ツ星シェフと我々素人が作る料理は、見た目が同じようだとしても食べたらまったく違うことがあるでしょ。それと同じ」だと続ける。「この『ニベアとドゥ・ラ・メールは同じ』という噂を言い出した人、すごいねぇ。ふたつの成分表をしっかりと読みこんでいるんだろうから」と、岡部さん感心しきり。化粧品開発に携わったことのあるビューティサイエンティストの岡部さんだからこそ、この噂の真意を尋ねたら、すぐ両製品の成分表を確認。ふつうの化粧品ユーザーではなかなかそこまでは……。

ニベアとドゥ・ラ・メール、違いがわかれば使い方も変わる。どっちも愛用に値する名品と言えるのでは?

ニベアはバニシングクリームと呼ばれているタイプの、古くからあるクリーム処方で肌を保護するもの」だと岡部さん。ドゥ・ラ・メールも油で肌を保護するが、肌への働きかけを重視している。そう、目的も異なるのだ。「だからと言って、ニベアがよくないとかドゥ・ラ・メールのほうかいいって理由にはならないと思う」。ニベアは1911年にドイツで誕生した、「認知度と安心感で殿堂入りしているクリームと言える」。一方のドゥ・ラ・メールは高級クリームのパイオニアとして君臨しているのだ。どちらかを選んでも、双方を併用するのも、あなた次第。

 

撮影・文/N・ピギー