こんにちは、美容ジャーナリストの山崎多賀子です。自分が乳がんになって感じたこと、気づいたことで、みなさんのお役に少しでも立てれば…そんな思いでスタートした連載です。どうぞ!
からだのなかでダントツ感度(センサー)抜群の手。
体のパーツは、それぞれが唯一無二の役割をもっていて、どれも大切ですが、私は働き者の「手」を心からリスペクトしています。まず機能面でいうと、手の指先の感度は他のパーツの比ではありません。触った瞬間、固い、柔らかい、ザラザラ、コリコリ、熱い、冷たいという触感を微細なレベルで察知できる。「耳たぶくらいの固さ」が分かるのは指先以外のパーツにはありません。
その微細な情報は脳に瞬時に伝えられる。指先を使うと脳トレになるように、指と脳は互いに密につながっているようです。料理も裁縫もメイクも、顔のマッサージも、指先の感度(センサー)があるからできること。私の手指は太くて丸くて節ばっているけれど、「手ってすごいなー。ありがとう!」と、大好きで、愛おしく思っています。この感覚、変ですか?
指の感覚が鈍ると感情まで鈍る!?
私が自分の手にとくべつの愛を感じるきっかけは、「指先がしびれて感覚が鈍くなる」という副作用のある抗がん剤を使った経験があるからだと思います。医師に「パソコンが打ちにくくなるかもしれません」と言われたときは、ライター業を廃業? と、焦りました。幸い副作用は軽度でパソコンは打てましたが、物を落としやすくなったり、指や打撲やキズができても気づかなかったり、変な感覚がしばらく続きました。その後に女性ホルモンを抑える薬を使い始めると、今度は指の関節を動かすと激痛が走り、ペットボトルの蓋もプルトップも空けられない時期が長くありました。
指の関節の不調は、加齢により女性ホルモンが減っても起こるので、個人差はあるものの女性の多くが経験しているようです。とにかく当たり前だと思っていた指の感覚が鈍くなると、細かい作業ができにくく、やりたくなくなる。すると指と脳が連動しているからか、五感の一つが弱くなるだけで、楽しくない。指の感覚がないと感動が減る気がします。
もちろん手のすごさは指先だけじゃありません。お腹が痛いとき、手を置くとホッとして痛みが和らぎます。落ち込んでいる人の頭や背中に手を置くだけで、少し安心させることができます。「手当て」とはよく言ったもの。手には癒しのハンドパワーがあると信じています。
大切な手にずっと働いてもらえるよう感謝のハンドケア
そんな指や手のひらを守っている手の甲は、乾燥や紫外線で荒れやすく、傷口から雑菌が入るとトラブルになることもあります。私は手の感覚をいつまでも大切にしたいので、「いつもありがとう」と念じながらハンドクリームを塗ります。手の甲だけでなく、指の一本一本をしっかり握るように。指の股や手首までよーく塗り込みます。
ハンドクリームは、日中はべたつかず、外出する日はUV効果の高いものを。寝るときは油分たっぷりで消炎や修復を助けるなど、色々なタイプを玄関やキッチン、リビング、寝室、洗面所に置いています。
さて一見、何でも同じじゃない?と思われがちなハンドクリーム界も今は多様化の時代に突入。なかでも画期的と思ったのは、この5月に発売になるシスレー シスレイヤ インテグラル コンセントレートハンド(SPF30 75ml ¥14,500・税別/シスレー)。積極的なエイジングケアができるとこれまでも美意識の高い人に評判のブランドですが、今回新しいのは、加齢によってポッコリ浮き出る静脈を目立たなくさせる機能を加えた点。確かに高価ですが、そのぶんこだわりも大きい。SPF30あるので外出前に使うと手がつややかになり、ガサガサはすぐに収束する実感です。
余談ですが、赤く腫れてカサカサだった義母の手のはなし。
長年酪農や農業に従事してきた義母の手はいつも赤くてちょっと腫れていて、カサついて日焼けをしていました。農作業の合間に広い屋敷の周りの草むしりをし、花を育てるのが趣味。家では炊事や得意の縫物と、じっとしていないから、まさに働き者の手です。ところが80歳を超えて車いすの生活になり施設にお世話になってから、義母の手がどんどんピンクみを帯びた白い先細りの美しい手に変わっていったのです。「お義母さん、色白でこんなにキレイな手だったんだね!」。手は修復力もまたすごいのだ、と感動すると同時に、これまでこの手でいっぱい働いてきたんだと思うと、本当に愛おしくなります。
私も皆さんも、魔法のようなすごい手を二つも持って、色々なことに使えます。そう考えると、自分の手が愛おしくなるのではないかしら。
文・写真/山崎多賀子(美容ジャーナリスト)