みなさん、こんにちは。大竹稽がお送りする「禅の美容室」。
先日、家の蝋梅が咲きました。「もうすぐ春ですね」。こうして自然の移り変わりを感じる時間、それが心の美容にもつながるでしょう。
新年最初の川野和尚のお話、いかがでしたでしょうか。
一般の僧侶たちより、心に怪我をされた-しかも大きな怪我を-方々に日々寄り添っていらっしゃいます。そんな川野和尚から、心の怪我を治すために大切なことをうかがいました。
怪我の手当て。
みなさん、怪我をされたことはありますか?
骨折レベルではなくても、たとえば靴擦れとか。怪我の手当てがなによりもまず、怪我の治りを早めます。手当ての怠けは、その後の傷の経過に大きく影響します。
まずは応急手当て。傷口を洗う、砂やゴミなどの異物を取り除く。傷口をハンカチなどで抑える、バンソウコウ等があったら貼って保護する。
当日の手当てで終わり!ではありません。傷口が化膿しないように、傷がきれいに治るように、その後の手当ても必要ですよね。
ところで、心も同じように、怪我をしますよね?
心の怪我。
もちろん、体の傷や骨折のように、目に見えて血が出たりはしません。しかし、体と同じように、心も痛みます。
一番痛むのは、知人の死ではないでしょうか。私にもまだ、治りきっていないある人の死の傷があります。
知人の死の経験がなくても、たとえば、暴言を吐かれた。あるいは仕事での無理難題。あるいは、恋人と別れた……などなど。
自分でもあほらしいと思ってしまいますが、十代から長く付き合った女性のことを思い出してしまうこともあります。もちろん、恨みながら思い出すのではありませんよ。自分の至らなさをほほえんでいる感じです。
さて、目に見える傷口がないだけ、心の怪我はやっかいです。
心に怪我をしたとき、みなさんはどうされますか?
気分がアゲアゲ(死語?)になる曲を聴く。
好きなもの(ケーキとかステーキとか?)を食べる。
仕事を休む。
寝る。
やってはいけないものが三つあります。
立て直しではなく、手当てが大事。
まず、気分をアゲアゲにしても、怪我は全然治りません。すぐに気分が落ち込むのを経験したことがあるのではないでしょうか。むしろ、いっそう気分は落ち込むでしょう。失恋には失恋にふさわしい曲がありますよね。
好きなものを食べまくるのは、心にも体にも負担になります。同じように、なにかに逃げ込むことは、ノーグッドです。
ということで、仕事を休んでしまうのも、ノーグッド。できる範囲でそれまでと同じリズムを保つ。そのリズムを緩めながら、手当てをしていくのです。
だから、寝ることは大事。そして、しっかり心の怪我に向き合うことが大事。それが心の怪我をきれいに治すコツなんです。
「早く元気になろう!」「こんなもんくらいで!」などど、無理に立て直そうとすることは圧力になります。立て直しはダメ。体の怪我も、一挙に治ることなんてありませんよね。心も同じです。
目に見えないところで、ゆっくりと変化しているのです。
もし、あなたがいま、心に怪我をしていたら……。まずはリラックスして、落ち着いて、自分が怪我していることを認めましょう。その上で、その怪我を手当てしながら、ゆっくり治していきましょうね。しばらくしたら、自分の心がよりうつくしくなっていることに気づかれるでしょう。
撮影・文/大竹 稽