みなさん、こんにちは。
大竹稽がお送りする「禅の美容室」。
さまざまな花の香りと色を楽しめる時期になりました。冬の花が好き、と言われる方もいらっしゃると思いますが、やはりわたしは春の花が好き……
「梅は寒苦を経て清香を発す」という禅語があります。わたしたちを楽しませてくれる匂いも色も、冬の寒さという苦労があってこそ、ということですね。
さて、今回から調布市にあります源正寺の住職、永井宗明和尚の話しを紹介します。
坐禅というドテッパンネタ
いきなりですが、みなさんは「ゼン」と聞いてなにを思い出されるでしょうか? 茶道や華道でしょうか? それとも、剣術や忍術でしょうか?
いずれも「ゼン」とつながっていることは確かですが、さて、人を選ばず時と場も選ばずとなってくると、違う答えが出てきます。
それが、坐禅。
禅宗といえば坐禅、坐禅といえば禅宗。
映画やドラマで、登場人物たちがお寺で足を組んで坐っているのを見たことはありませんか?
2017年にNHKで放送された「おんな城主直虎」では、直虎が幼少期を過ごしていたお寺でのシーンで、しばしば登場人物たちが坐禅をしていました(禅宗では、「ザゼン」を「坐禅」と書きます。「座」ではなく「坐」なんですね)。
さてさて、みなさんにもう一つ質問です。
坐禅をしたことはありますか?
坐禅はスポーツだ。
ただじっと坐る。微動だにせず坐る。
鎌倉建長寺での坐禅中、巨大なアシダカグモが突然、目の前に飛び込んで(ほんとうに飛び込んできたんです)、当たり前のように飛び上がって驚いたことがあります。声を出さずに耐えられたのは、それでも長年、坐禅をしているからでしょうか……。いやはや、ドギモが抜かれるってまさにあんなことでしょう。
あなたは、目の前に巨大なクモが飛び込んできたら、どうなりますか?
わたしの時は、指導をしていた和尚が、なにごともなかったように素手でクモを捕まえて、ポイッと外へ投げ捨てました。もちろん、無言で……。ぞわぞわ……。
閑話休題。
坐禅中は、よほどのことがない限り、動いてはならない、声も出してはならないんです。そんな坐禅を真冬にしたらどうなるでしょう?
わたしなどは、寒くて全身が凍えそうになってしまいます。なにせ、ジャンパーはもちろん、靴下も履いていてはいけないのですから。
しかし、和尚さんたちは違います。
坐禅をしていると汗をかくのだそうです(信じられます?)。実際に、座布団などは汗でビシャビシャになってしまうのだそうです。
不動の姿勢でなぜ汗をかけるのでしょう?
ポイントは腰。
動かないのに汗をかく理由は、姿勢が整っているからだそうです。正しい姿勢ができれば、血行も本来あるべき自然の流れをするのです。
それが「良い」血行というもの。
こうして、坐禅をして汗をかくのだそうです。
さて、正しい姿勢をとるには、どこに気をつければいいのでしょうか?
答えは……腰。
昨今は、リラックス○○という触れ込みでさまざまなグッズが売られています。でも、その多くはほんとうのリラックスをさせてくれないんですよ。
たとえば、ソファー。背中を持たせかけてソファーに座り続けると、腰が痛くなってきませんか?
重い荷物などを背負い続けても、肩より腰が痛くなってきませんか?
どうやら、わたしたちの姿勢のベースは腰にあるようです。
みなさんも、腰に注意して生活してみてください。姿勢の美しさは、必ず、みなさんの心身の美しさにつながるはずですよ。
さて、正しい姿勢をするためのポイントは、「腰」のほかにもう一つあります。これについては次回に……。
文・写真/大竹稽(思想家、教育家)