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Inner Care】【COLUMN

2019.01.17

あなたには毎日、お手入れしていることはありますか?

みなさん、こんにちは。

大竹稽がお送りする「禅の美容室」。

肌にしみる冬の寒さが始まっています。そんな季節に、ホッと心が温まるひとときをあなたに贈れますように。

これまで、松本和尚のお話を三回、お伝えしました。「余分なものがないことが、美しいプロポーション」でしたね。さて、禅僧たちの美の秘訣が日々の生活・行動にあることを、どの和尚たちも仰います。良い機会なので、その中身に迫って行きましょう。

宮大工という仕事。

これまでの松本和尚のコラムで使われた幾つかの写真には、お寺の本堂がこっそり写っていたものがあります。

和尚が住職をされている能満寺の本堂は新築真っ最中です。もちろん、取材に伺った日も、大工さんたちがお仕事されていました。

能満寺で仕事をされていたのは、日本最古の宮大工の会社、「金剛組」です。なんと初代金剛組組長は、聖徳太子の時代まで遡るんですね。

寺院にいきますと、一般の家屋にはないあれやこれやが目に止まります。おそらく、目に留まらないところのほうに、宮大工さんの技が隠されているのでしょう。建築途中だったこともあり、完成後には隠れてしまうところを拝見できまして、好運でした。さて、和尚と話をしながらちらっと目に入った削くずの、それはそれは美しいこと。写真にするとあまり伝わりませんが、一枚の透かし紙のような美しさなんです。それが、木を削るたびに生み出されています。和尚の話しのついでに、というわけではないのですが、少々お仕事中にお邪魔してきました。

「なぜ、そんなにきれいな木屑ができるのでしょう?」

カンナを研ぐというお手入れ。

スキンケアなどでも、おそらく「毎日のお手入れ」が大事なのでしょう。妻もいろいろ(無知ゆえになにがなになのか判別できません)、朝と夕にやっております。

宮大工さんにとって一番手入れすべきものは、カンナ。カンナを研ぐことが、不可欠なお手入れなんですね。

「カンナを研いでおくことは、わたしたちにとってなにより大事なことです。建物の骨である木材が、きれいにぴたりと合うためには、木材が荒立っていてはいけません。ここをごまかして作ってしまうと、建物は傾いてしまいます。美しい建物の裏には、わたしたち職人のカンナの手入れがあるのでしょうね」

ふむふむ、まさに、わたしたち一人の人間にも同じことが言えそうです。美しい人間になるには、必ず、職人さんの「カンナ研ぎ」に相当するものがあるはずです。その辺、松本和尚、どうでしょう。

「もちろん、そうでしょうね。わたしたちにも、日々、手入れすべきことがあるはずです。まずなにより、わたしたちは言葉遣いに気を配るべきでしょうね。言葉遣いは、必ず行動になり、行動は必ず習慣になる。美しい表情の人たちは、言葉遣いもまた美しいのでしょう」

言葉のお手入れ。

わたしたちの心は、言葉でできています。怒る心は怒りの言葉で、恨む心は恨みの言葉でできています。言葉が常に美しく穏やかな人は、表情も美しく穏やかなのでしょう。ですが、だれでも心が荒立ってしまうことがある。そんなときは、自分の発している言葉のお手入れをしてみたらどうでしょう。宮大工さんのカンナのように、必ずや、あなたを美しく保ってくれると思います。

文・写真/大竹稽(思想家、教育家)