桜を見た記憶さえない春。
昨年春、ライトシフト研究家として「人生100年時代、変革がはじまっている」と、本の中で書いた。恥ずかしいのだが、10年ぐらいかけて社会は徐々に変わっていくのだと私は思っていた。ところがこともあろうに今年は、昨年呑気に花見をしていた同時期、すっかり見たこともない景色に世の中が変わってしまった。それもたった1カ月で激変した。
まるでSF映画を観ているみたいだった。目には見えないウイルスのせいで、世界中がパニックにおちいり、亡くなった方に胸が痛んだ。同時に、自分にも迫りくる不安と恐怖に満ちた日々だった。
2020年がもうすぐ半分終わる。
さて、もう6月。一年の半分が過ぎてしまう。緊急事態宣言が全国で解除になったことを受け、少しは行動範囲が広がったけれど、なんとなく動き出せない自分を感じていませんか?
そう、私たちは、目標を持つことやそれに向かってがんばること、少しでも前に進むことを、やりがいや充実感の糧にしてきた。だから、何もしないでただ予防に専念してきた日々は受け入れがたい毎日だった。
あえて振り返ってみよう。
ここであえて、今年になってからの日々を振り返ってもみよう。
失ったこともあるし、コロナから得たこととは言いたくないけれど、この生活環境の変化の中で、得たことを書き出してみる。
(クライアントの方々からの声で多かった順)
・会えないからこそ、大切な人が誰なのか気がついた
・会社に行かなくても仕事ができることがわかった
・家の中で楽しめることを見つけた(マスクを手作りしたり、料理をしたり、新しい分野に手を広げた)
・身体づくりを家でやりはじめた
冬の時期に種を植える大切さ。
これらを深堀りしてみると、
「目標を決めて、ガンガン新しいことをやっていこう!!」ということではなく、
- 原点回帰して自分の方向性を定める時期
- 今ある環境を整える時期
- 大切にしたい人との関係性を深める時期
などなど、
一言で言うと、『基礎固めと土台作りの時期』ではないのだろうか。
この一年をそう決めると、何かやらなくてはとか、気持ちも上がらないのに焦ったりしないのでは?
変化があるときだからこそ、足元をしっかり固める。そして未来のために種を蒔く。
冬の時期に種を蒔ける野菜は、ホウレンソウやタアサイなどがある。厳しい時期だからこそ、霜や寒さに当たって葉肉が厚くなり、糖度が高くなって甘い濃厚な味を楽しむことができる野菜たちだ。
私たちも今はいろんな思いが巡る時期だが、この時期だからこそ、未来を信じて種を蒔きませんか?きっと、強い芽が、美しい花が、必ず咲くはずだから。
文/井上野乃花