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みなさん、こんにちは。
大竹稽がお送りする「禅の美容室」。今回から心機一転、禅の心を持つ哲学者の私を含めた3名が、みなさまの悩みに回答させていただきます。少しでも悩みが軽くなっていただければ幸いです。
お悩み:この顔のせいで自信が持てない、美容整形をしたい。でも、迷っています。
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私は今、都内の出版社の女性雑誌編集部で編集者をしています。主に美容テーマを担当することが多く、新発売の化粧品情報、美容の知識などを得ることが多いです。それも手伝って、どんどん自分に自信が持てなくなっています。
このような大変な状況の中、自分勝手な悩みで恥ずかしいのですが…。
小さい頃から「可愛い」とか「美人」と言われたことはありません。男性から告白されたこともありません。今まではそんなことをコンプレックスに感じたことはなく、「私は私!」と思って進んできました。しかし、仕事で美容のことを知るほどに「私に恋人ができないのは、この容姿が問題なのかも」とか、見た目をすごく気にしてしまい、うまくいかないことはこの容姿のせいと思い込むことが多くなりました。目は一重、鼻も低く、顔も大きい、だから私はダメなんだ…美容整形をすればもっと自信が持てて、楽しい未来が待っているかも。でも、親や周囲はどう思うだろう? そんなことを、テレワークでひとりの時間が多い今、頭の中で堂々巡りしています。何かアドバイスをいただけますか。(29歳・出版社勤務 独身)
回答:太寧寺庵主 山本浄月さん「みっともない真似だけはなさらないように」
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容姿のコンプレックスをなくしたい。整形すれば異性にもてるはず。
そうですか。どうぞ、お好きになさってください。どうなろうと「あなたはあなた」。わたくしの知ったこっちゃありません。
でもね、化けの皮はいずれはがれます。齢(よわい)を重ねれば地がでるのは自明の理。化けの皮がはがれたときに、恥ずかしいことにならないように重々、お気をつけくださいね。
心を美しくしていけたらどれほどよろしいでしょう。あなたの心持ち次第で、心は齢を重ねるほど、美しくなれるんですよ。
コンプレックスなんてものも、ないよりあったほうがいいのです。なぜなら、コンプレックスがあなた自身を、そしてあなたの心を磨いてくれるからです。コンプレックスの原因そのものを取り除けなくてもいいんです。あなたでしたら、きっと、そんなコンプレックスを埋めて余りある魅力をもてるはずです。
けっして、みっともない真似だけはなさらないように。
![太寧寺は臨済宗建長寺派の末寺。開基は源範頼。寺名も範頼の法名「太寧寺殿」に由来する。寺には山本周五郎の『赤ひげ診療譚』のモデルとなった小川笙船の墓がある。「おもねるな。甘えるな。思い切れ」、そんな乱暴な言葉に真情がにじむ尼のおばあちゃん。](https://andcosme.net/wordpress/wp-content/uploads/2020/04/v37-4-e1587257549927.jpeg)
回答:チワワ しじみさん「整形してもしなくても、けっきょくもてるよ」。
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おねえさんは、整形できれいになって自信を持ちたいんだよね。それならすればいいんじゃないかな。
親やまわりの人がどう思うか心配? でも、その不安も、男の人にもてたいっていう気持ちも、けっきょくは自分が人にどう思われるか気になるってことだよね?
おねえさんは「整形したら自信がつくかも」っていうけど、そもそも他人にどう思われるかなんて気にしない人のことを「自信のある人」っていうんじゃないの?? うーん、シジミは犬だからむずかしいことは分かんないや。
きれいになったらもてるかもしれないけど、ぎゃくに「他人からどう思われても気にしない!」ってくらいの気もちになれたら、もう整形してもしなくても、すっごいすてきな人なんだし、けっきょくもてると思います。
あっ、しじみのパパもね、「結婚して、もてたいと思わなくなったとたんになぜかちょっともてるようになった! くそ!」ってくやしがってて、ママに半ごろしにされてたよ。
![ちょっとビビリのロングコートチワワ。かつて「いらない子」として里子に出され、それゆえに痛みも、愛も必要とされる喜びも知っている。特技は喧嘩の仲裁。仲裁に用いられる「キュンキュン」と「擦り寄り」に抗える者はいない。生まれ変わったらフェレットになりたい。](https://andcosme.net/wordpress/wp-content/uploads/2020/04/v37-6-e1587257657648.jpeg)
回答:哲学者 大竹稽さん「不足を埋めるか、他の部分を高めるか」。
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コンプレックスのない人なんて、いるのかしら?大なり小なり、誰もがコンプレックスを抱えている…。
「わたしのは大きいコンプレックスなんだよ!」。そりゃ失敬!すぐに処置をしなきゃ、そのような方に哲学者は無力。なんせ、ラ・ロシュフコーという思想家は「哲学者っちゅうモンは、過去未来のことにはぐだぐだ述べるくせに、現実問題をひとつも解決せん!」と失笑しています。
とはいえ、ちょっと待って。悩みとは、現実ですし、未来ですよね。相談者さんの悩みもまた、未来につながる現実問題。だったら哲学にもちょいっと出番はあるのかも。
悩みは自分の「不足」について意識してしまうことから生まれます。しかも、人間の意識ってのは、「不足」に向けられる。さて、その後、あなたはどうします?
全力で「不足」を埋める! または…。「不足」はそのまま、他の部分を高める!
サルトルという哲学者がいます。目は極度の斜視。女の子たちから振られ続けたことがクソコンプレックスになっちゃいましたが、後者の選択をしてクソもて男になりました。凸凹でも凸が魅力的、そんな女性、ぼくは好きです(あ、ぼくなんかから言われてもね)。
![東大を二度辞めた哲学者。気づいてしまったことには目を背けられない不器用さゆえに、様々なフィールドを転々とし、鎌倉建長寺の元総長に「風来坊」と名付けられる。専門はフランス思想。思考塾の塾長であり、「てらてつ」の主宰者。『超訳モンテーニュ』ほか、編著書多数。](https://andcosme.net/wordpress/wp-content/uploads/2020/04/v37-8-e1587257734946.jpeg)
撮影・取材・文/大竹 稽