薄毛、髪の悩みはクリニックで治療するという新常識。
薄毛をはじめ「髪の悩み」を抱える女性が増えています。そんな悩みをクリニックで治療するという流れも加速中。では、育毛の専門外来を設けている美容クリニックでは、どのような診察を行っているのでしょう。
前回の「オンナの薄毛問題 食事編」に続いて、「松倉クリニック&メディカルスパ」の田路めぐみ先生に、実際に私の毛髪と頭皮の状態をチェックしていただき、頭皮&毛髪ケアの方法をうかがいました。
【薄毛治療1】ふだんのヘアケア、体調などを問診表に記入。
――私自身は髪の悩みは今のところないのですが、育毛外来のカウンセリングがどのようなものなのか、教えていただけますか?
「まず、シャンプーの頻度や育毛剤の使用の有無などふだんご自宅でどのようなヘアケアをしているのか、いつごろからどのようなことが気になっているのか、ほかの体調不良や環境の変化はないかなどを問診表に記入していただきます。
そして、頭皮と毛髪の状態を確認します。実際には血液検査の結果も踏まえてカウンセリングをするのですが、結果が出るのに約3週間かかるので、今日は視診と問診でお話させていただきますね」
【薄毛治療2】頭皮と毛髪の状態をチェック
――視診でチェックするポイントは?
「髪の状態、頭皮の状態を確認します。頭頂部、側頭部、前頭部、後頭部で状態が異なることもあるので、全体的に把握するようにしていますね。
頭皮も毛髪も健康な状態だと、ひとつの毛根からしっかりした毛髪が2、3本生えていますが、加齢によるホルモンバランスの変化、栄養不足、ストレスなどで発毛する力が弱ってくるとひとつの毛根から生えてくる髪の本数が減ったり、細い毛が増えてきたりしてボリュームが減り、ハリやコシがなくなってくる。
健康な毛髪は、生えはじめてから抜けるまでのサイクルが6年前後です。細い状態で生えてきたものがだんだんと太くなって、しっかりとしたハリやコシが出てくるんです。ところが生やす力が弱ってくると、生えはじめて1年ぐらいの細いときに抜けてしまったり、ひとつの毛穴から生えてくる本数が減ったり、毛穴はあるのにまったく生えてこなかったり……ということになります」
【薄毛治療3】細い抜け毛が増えてくる、それ薄毛の初期です。
――毛が生えていない毛根から再び髪が生えてくることもあるのでしょうか?
「髪をつくる毛母細胞が生きていれば、栄養と酸素が行き届くことで再び生えてくるようになります。久保さんの場合は、とくに薄い部分はないですし、ひとつの毛穴から2、3本生えているところが多いですが、細い毛も少し混じってきていますね。最近、枕につく抜け毛が細くなったりしていませんか?」
――あまり気にしていないので気づきませんでしたが、ふだんの生活のなかで抜け毛の状態を見ておくと、早めに状態の変化を把握できそうですね。
「ある日突然、髪の量が半分になるとか、髪の太さが一気に細くなるということはありません。細い抜け毛が増えてくるのが、最初期の変化です。本来の毛髪の寿命をまっとうする前に抜け落ちてしまう毛が増えるということは、しっかりした太さの髪の数が少なくなるということですし、全体の数も減ってきます」
【薄毛治療4】プレ更年期に入ったら薄毛治療のはじめ時。
――頭皮の状態はどうですか?
「頭皮は厚い人だと1cmぐらいあるんですよ。久保さんは少し薄いけれどそれほど硬くもないですね。うっ血したり、極端に赤かったり荒れていたりするところもありません。側頭部にややカサついているところが見られるのは、髪を洗うときに油分を落としすぎているからだと思います。おおむね健康と言っていいでしょう。
全体的に薄毛対策が必要な段階ではありませんが、年齢的にもプレ更年期でホルモンのバランスが変わりはじめているのかな、という印象です」
――更年期に差しかかってきているな、という感じはしています。ホットフラッシュまではいきませんが顔が火照ったりしますし、手先、足先が冷えることもあります。
「『エストロゲン』という女性ホルモンが肌や毛髪を健康に成長させる役割を担っているのですが、プレ更年期に入ったころから分泌が少しずつ減ってきて、肌や毛髪の状態も変わってきます。頭皮や毛髪に限ったことではありませんが、状態が悪くなってから対処するより、いい状態をキープするほうが簡単です。プレ更年期に入ったら、大きな変化が出る前から頭皮も毛髪もしっかりケアして、健康な状態を維持していく。
久保さんも亜鉛と鉄が不足している可能性があるので、食生活を見直しながらサプリメントを採り入れてもいいかもしれません」
【薄毛治療5】体内鉄量不足が薄毛を助長。
――血液検査で貧血を指摘されたことは一度もないのですが、それでも鉄が不足している可能性があるのですか?
「体内の鉄の量を測る指標には、『ヘモグロビン』と『フェリチン』の2種類があります。ヘモグロビンは酸素を運搬する役割で、これが足りないと貧血の症状が出る。フェリチンは鉄と結合する性質を持っていて、体内に鉄が余っているときは結合して蓄えておき、足りなくなると放出します。フェリチンが不足すると、髪が抜けやすくなるほか、疲れやすい、爪や髪が弱い、内出血しやすい、肩こりや腰痛、冷え性などの症状が出ることもあります。
一般的な血液検査ではフェリチンは測定しないので、フェリチン不足による鉄欠乏を見つけることは難しいんです」
【薄毛治療6】頭皮マッサージ、運動、上質睡眠で育毛を心がけて。
――栄養面以外にできるケアはありますか?
「指や頭皮用のブラシで頭皮をマッサージしたり、適度な運動をして血行を促進すること。ていねいに洗髪して皮脂などの汚れを落としてあげること。ストレスを軽減させること。成長ホルモンは寝ているあいだに分泌されるので、質のよい睡眠を取れる環境をつくること。寝る前にテレビやパソコンのブルーライトを浴びないようにするだけでも睡眠の質はあがりますよ」
【薄毛治療7】どんなシャンプーを使うかより、いかにていねいに洗髪するか。
――シャンプーの種類も気にしたほうがいいのでしょうか。
「シャンプーの種類よりも、『汚れをしっかり落とす意識を持って、ていねいに洗い、ていねいに流すこと』が大事。どんなシャンプーを使っていてもきちんと洗えていなければ意味がありません。
刺激が強すぎず、皮脂を落としすぎないアミノ酸系のシャンプーは頭皮にやさしいアイテムです。ただし洗浄力が弱めなので、ヘアワックスなどの整髪料を落としきれないことも。皮脂の分泌が活発でベタベタしやすい方にも向きません。
頭皮が傷んでいる方は、お湯だけで洗う「湯シャン」も選択肢のひとつ。ただし皮脂汚れを完全に落とすことはできないので、数日おきにシャンプーをして「汚れをしっかりオフしてあげる日」をつくってあげてください」
【薄毛治療8】薄毛問題はからだの変調の現れのひとつ。
――薄毛の悩みは、頭皮と毛髪だけを見ていても解決しないんですね。栄養、睡眠、血行、ストレスケア。髪を生やす「からだ」を健康な状態にすることが大事だと。
「『薄毛』は単体で起こっているのではなく、からだの変調の現れ方のひとつです。フェリチン不足のように、保険診療の範囲で行う検査ではわからない栄養不足が薄毛や『なんとなくの不調』の原因になっていることもありますし、更年期にホルモンバランスが変わることで髪質や毛量が変わることもあります。
育毛だけでなく、体質や体調の改善、ストレス分析などを通じた『健康』にまつわる幅広いケアを行っていますので、気軽にご相談にいらしてください」
ライター久保の感想は……?
「わたし自身はもともと毛量が多く、かなりしっかりした天然パーマということもあって、“髪がペタッとしてしまう”という悩みさえありませんでしたが、同年代の友人のなかには“最近、わけ目が目立つようになってきて……”とか“もともと猫っ毛だけど、ますますペタンとなるようになってきた”と、薄毛でやんわり悩んでいる人がチラホラ。50代の先輩方からも“更年期になって髪質が変わった”という話を聞いて、“毛髪の悩みは、いま直面していなくても、いずれ自分にも降りかかってくるにちがいない”と思いはじめたところでした。
冷えや肩こり、腰痛には悩まされているので、フェリチンの量も気になります。“薄毛がはじまるまでカウントダウンの時期に入った”という自覚をもって、いまのうちにカウンセリングを受けておこうかな」
続きは明日(5月21日)更新です。お楽しみに。
クリニック撮影/もろだこずえ 取材・文/久保加緒里 取材協力/松倉クリニック&メディカルスパ https://www.matsukura-clinic.com/concept/
※こちらの記事の取材は緊急事態宣言発令前に行いました