日本とヨーロッパではこんなに違う。お風呂の文化から考える清潔意識。
まだまだ世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。不安ですよね。でも、ポジティブに考えれば、日本では欧米のような感染爆発は起きていません。
世界から見て、なぜ日本で感染爆発が抑えられているのかは謎のようですが、理由のひとつとしてクローズアップされているのが、日本人の清潔意識です。
確かに、風邪をひいたらマスク、手洗いの習慣があり、毎日のようにお風呂に入るのは、欧米では見られない独特の文化です。
ヨーロッパでは、バスタブに浸かる人は少数派。シャワーですら毎日浴びない人が珍しくありません。そのわけを探ると、かつて人々を震え上がらせた伝染病、ペストに行きつくのです。
ペストのせいで入浴しなくなったヨーロッパでは、香水文化が花開きました。
中世ヨーロッパでは、ペストは空気中にあって、入浴時に開いた毛穴から体に入りこむと考えられていました。そのため、当時人々が通っていた蒸し風呂屋はペスト流行のたびに閉鎖され、”入浴は体によくない“という意識が醸成されたのです。
18世紀の美容書には「入浴代わりに布で顔をふき、髪はブラッシングすれば洗わなくても清潔に保てる」などとあり、入浴を嫌った様子が想像できます。
ヨーロッパは湿度が低いとはいえ、体を洗わないと体臭がきつくなるのは自明の理。そこで発達したのが、ムスクやバラなどの香料を調合した香水でした。香水には、悪臭隠しの意味があったのです。
昔からお風呂が大好きだった日本人。銭湯は庶民の憩いの場でした。
一方、日本で恐れられていた流行病(はやりやまい)は疱瘡(ほうそう:天然痘のこと)でした。致死率は20~50%、助かっても顔やからだにあばたが残る怖い病気です。
あばたとは凸凹肌(クレーター肌)のこと。女性にとっては切実な悩みで、江戸時代の美容の本には、顔のあばたを白粉で隠す方法が紹介されています。同じ本には「湯上りの化粧法」が載っていて、日本では昔から、入浴が美容に良いと考えられていたことがわかります。
江戸時代後期、都市の庶民は毎日のように銭湯に通っていました。銭湯は体を洗うだけでなく、社交の場、癒しの空間だったのです。
見えないウイルスに対する不安で心が疲れたら、お風呂でリラックスを。
日本は水資源が豊かで、しかも肌に優しい軟水。水道水だって飲める国です。海外の人に、「日本人は水を使いすぎる」とよく言われますが、そんな私たちの清潔意識が、新型コロナウイルスの感染抑止に少しでも役立っているなら嬉しいですよね。
日本人にとって、お風呂は癒しの場。見えないウイルスに対する不安で心が疲れたら、しっかりお風呂に入りましょう。ストレスを感じた時は、少しぬるめのお湯(37~39℃)にゆっくり浸かると副交感神経の働きが高まって、体の緊張がほぐれますよ。
そして、明日はもっといい日になると信じて、みんなでこの危機を乗り越えましょう!!
写真提供・文/山村博美