オーガニックコスメは有機栽培植物を使っているわけではない。
一昨年の冬だったか、野菜が高騰して、いつも行くスーパーでは品薄だった。ところが、有機栽培ものばかりを扱う店には、割高だけれど品物はそろっていた。試しにホウレンソウと大根などを購入。味が濃く、とってもおいしかった。でも、1把¥400するホウレンソウや1本¥500近い大根を、毎日の食卓には……。そんなことを思い悩んでいるうち、野菜の高値は解消された。で、そのとき思い出したのが、「オーガニックコスメを使えば肌トラブルは起こりにくい」というウワサ。以来、本当はどうなんだろうと、ずっとわだかまっていた。ビューティサイエンティストの岡部美代治さんに真意を尋ねる前に、まず、オーガニックコスメの定義を教えてもらった。
「日本の場合は…」と但し書き付きでとおっしゃりながら、「オーガニックコスメは自然由来の成分を中心に配合し、化学的な成分をまったく使用しないか、使用したとしてもごく少量のみで作られたもの。そして、人間の肌に本来ある自然治癒力を助けたり回復させることに着目したスキンケアであると、メーカーがうたっている化粧品」とのこと。配合成分となる植物が有機栽培でなくてもいいってことなんだ。てっきり、オーガニックコスメに使われている植物は有機栽培とばかり思っていた。
オーガニックコスメは万人の肌にいいわけではない。
「肌への効果、安全性、トラブルの有無については、オーガニックコスメと普通の化粧品に差はないと思います。オーガニックでもそうでなくても、処方が悪ければトラブルは起こりうる」とおっしゃる。えっ、では、なんでオーガニックコスメが増えているの?
「オーガニックコスメの存在は、環境を考えて化粧品を作っているという、メーカーの姿勢や思想の表れ。だから、自然環境を守るために、オーガニックコスメを使うことの意味はある。ただし、オーガニックコスメだからといって、あなたの肌に100%合うとは限らない。天然のエッセンシャルオイルに対するアレルギーだってあるのだから」。なるほど。さらに、岡部さんは続ける。
「オーガニックをうたっていない化粧品の中にも、植物由来や天然由来の成分を活かしているものもある。それに、現在では普通の化粧品も環境を特別に悪化させているわけではないし」。
雰囲気オーガニックに惑わされるな!
ただ気をつけてほしいものがあると、岡部さんは警鐘を鳴らす。「環境に配慮しているわけではないのに、化学合成成分が肌に悪いから、肌によさそうというイメージを強調して、オーガニックを連想させる広告などで勘違いさせる化粧品もあること。メーカーのホームページなどをチェックして、きちんと見極めてほしい」。ユーザー側のリテラシーの確かさが試される。
取材・文/N・ピギー