メイク嫌いのドラァグクイーンのメイクレッスン開講!
妖艶なメイクに、煌びやかなドレス。スポットライトのもと、蝶のように舞うドラァグクイーンは、まさに美を具現化したような存在。
今回はそんなドラァグクイーンとして活躍するドリアン・ロロブリジーダさんに、クイーン流メイク術や、ドリアン的美容考察をインタビュー。「実はメイクが大嫌いでした」と語るドリアンさんの、メイクがちょっと楽しくなったエピソード、そして様々なドラァグクイーンメイクもお楽しみください。
メイクでメタモルフォーゼしたい。虫で言う”変態”?
――とてもメイクがお上手ですが、メイク術はどうやって身につけたんですか?
「今でこそ、海外のクイーンさんのメイク動画やHOW TO映像など、さまざまなチュートリアルがネットに溢れていますが、アタシがデビューしたころには一切なくて。見つけたクイーンさんの写真を必死にマネしたり、それはそれは試行錯誤しました。でも、本当に初期のメイクはブスだったんです(笑)。
あと、クイーン同士、楽屋で情報交換もマメにするんですよ。“アンタ、これイイから使ってごらん”みたいな。アタシもいろんなクイーンさんのテクニックを盗ませてもらいました」
――クイーンメイクのこだわりは?
「自分に関して言えば“化けたい”。すっぴんを想起させないくらい、とことんやりたい。メタモルフォーゼしたい気持ちが強いのかな。でも、ナチュラルメイクのクイーンさんもいるし、本当それぞれだと思います。自分は、骨格は生かしながらもがっつりメイクで化けて、ウィッグやドレスを着て変身するのが好き。虫で言う“変態”ってやつかしら」
アイラインの引き方を変えてみた。大嫌いなメイクがちょっと楽しくなった。
――コロナ前とはメイクする状況も変わったのでは?
「コロナ前はイベントなどで週に半分くらいはメイクをしていたんですけど、緊急事態宣言後はお座敷はゼロになりました。でも、自粛期間中にクイーン同士のインスタLIVEで、“メイクバトル”や“メイクコラボ”をしたんです。『鬼』とか『ピンク』とかメイクテーマを決めて。お互いのメイクを見たり、いろんな人からコメントをいただいたりして、今までしなかったようなメイクにもチャレンジできて楽しかったですね。新しい扉が開いた感じでした」
――昔からメイクがお好きだったんですか?
「ぜ〜んぜん! 今だって正直、ものすごく面倒くさいですよ。14年クイーンをやっていますが、最初の10年位は判で押したように同じメイクばかりやってましたから。でもね、何かのタイミングで自分の中でメイク革命が起きて、下手くそなりにいろんなメイクに挑戦しはじめたんです。そしたらちょっとメイクが楽しくなって。『今日は少し退廃的にしてみよう』とか、『今日はキリッとさせよう』とか。
これは実体験から言えることなんですが、『毎日メイクめんどくせぇな、つまんねぇな』って思ってらっしゃる方は、普段しないことにちょっと挑戦してみるといいですよ。アイラインの引き方を変えてみるとか、いつもは使わない色を試してみるとか。すると、“あら、いいじゃな〜い♡”“ちょっと楽しいかも!”って思える。それってある意味、お手軽なセルフリフレッシュだと思うんです。新しいワンピースを買うよりも安上がりにできちゃう。
アタシも苦手意識が強くて、自分はこれしかできないって思い込んでた節があったんです。でも実際やってみたら、どうにかなるじゃん!ってメイクに対する意識が変わって。一度スイッチが入ると、いろんな人のメイクを見るようになるし、新しいメイクに挑戦したくなるから、どんどん楽しくなるの。この間ようやく、40色のカラーパレットを買ったんだけど、“アタシ、こんな色使っちゃっていいの〜?”って、楽しくなっちゃいました(笑)」
大切なのはテクニックより、思い込みです!
――メイクでセクシーに見せるコツは?
「テクニックより、いちばんのコツは“私はきれい”と思い込むこと。セクシーに見せたいのなら、“私は今、セクシー”って思い込むことです。そしたら本当にセクシーになれるんだから。どんなにセクシーなメイクアップをしていても、所作や言葉遣い、表情がセクシーでなければ意味がないと思うんです。メイクだけでなく、視線や所作など、トータルで美しくあってほしいですね」
自分はキレイと思い込むことがいちばんのメイクアップ。
ポジティブに自分の魅力を表現するドリアンさんの言葉には説得力があります。
明日の後編では、いよいよドリアンさんの超絶クイーンメイクテクをたっぷり公開。お楽しみに!
写真提供/ドリアン・ロロブリジーダ 取材・文/井上幸子