まつ毛の「効用」と「高揚」。

もう何年もブームの火が消えないエクステや「つけま」に、高機能化するマスカラ。年齢にかかわらず、まつ毛命を自負する女性のなんと多いこと。長く濃くカールした「ひさし」のようなまつ毛を一度手に入れてしまったら、もう手放せなくなります。だってまつ毛は「オンナ度」を演出する最大の武器だから。

もし、そのまつ毛がなくなったら？　ものすごくショックです。少なくとも、抗がん剤で一度まつ毛を失った私は、ショックでした。だから長いまつ毛にあこがれるし、すごく大切に思っています。

私は月に1～2回ペースで、病院で抗がん剤治療を受ける患者さんを対象にメイクセミナーを担当しています。乳がんや婦人科系で使う抗がん剤の多くは脱毛を伴いますが、髪だけでなく眉やまつ毛も鼻毛も産毛も抜けます。で、まつ毛がなくなると目の輪郭が肌色になって黒目も心なしトロンとします。「目の周りの黒はまつ毛の黒だったんだ～！」と思わず感心してしまいました。

さらにまぶたが下がる！「まつ毛って、まぶたを支えていたんだ～！」とこれも発見。とにかく目の存在感が薄れるんです。

さらにさらに生活面では「超まぶしい」「ゴミがいっぱい入る」「汗が目にハンパなく入る（髪も眉もないから頭から直接ツーっと目に入る）」などなど、まつ毛って機能としても沢山の仕事をしてくれていたんだと、発見と感動の連続でした。

脱毛中の人はよく、「爬虫類のような目になった」と言います。私は「馬やラクダが愛らしいと思うのは、ふさふさしたまつ毛があるからだ！」と考えました。「もし目がむき出しだったら、怖いし狂暴に見えるかも。まつ毛があると、愛らしく優しく見えるのだ!!　そうだ、だから女性も男性も、まつ毛に高揚するのだ!!!」と。

日本人のまつ毛は短く細く下向きに生えている人が多いことと、カワイイことに価値観が高いので、なおさらまつ毛メイクに高揚感を覚えるのだ！と合点がいきました。

病院のメイクセミナーでは、生まれて初めて買った「つけま」を持参し、つけ方を教えてという参加者が確実に増えている。眉よりもまつ毛が抜けることがショックで、抗がん剤をやらない、と言う60代の女性もいた。それくらい、まつ毛愛が強い女性が多いのです。

つけまつ毛は本来、まつ毛の上に貼るものなので、土台のまつ毛がないと、意外と難しい。それでも治療をきっかけに、つけまの達人になる人もいて、とても楽しそうです。