みなさん、こんにちは。
大竹稽がお送りする「禅の美容室」。禅の心を持つ哲学者の私を含めた3名が、みなさまの悩みに回答…の予定でしたが、この状況下、前回登場の山本浄月庵主さんは不参加、ご了承ください。その分、私が!!
【お悩み】先の見えない状況で不安しかありません。
緊急事態宣言が徐々に解除と聞いても不安ばかり。仕事がなくなったらどうしよう? こんな状況でメイクやおしゃれをするのは悪いことに思える、明るい未来がまったく浮かばない…暗くなるばかりです。この不安な気持ちを何とかしたいです(30代 会社勤務 独身)
【回答】チワワ しじみさん「なんでもかんでも、ウイルスのせいにしてない?」
えっ? 今はみんなが、いろんなことを「じしゅく!」「じしゅく!」って言ってるけど、ウイルスがうつるようなことしちゃダメだよ、ってだけだよね?
メイクやおしゃれはそういうのじゃないし、何がいけないのかわかんないよ。それに、ウイルスがいてもいなくても、もしお仕事がなくなったら、あたらしい会社ではたらけるように、おねえさんもがんばるはずでしょ? うーん、メイクのこともそうだけど、ウイルスのせいにして、勝手におちこんでるようにみえるよ。せっかくテレワークで時間もあるんだから、メイクも楽しんだらいいし、いろんなこと勉強する“じぶんみがき”したらいいんじゃないかな~。そしたら、もっとメイクが上手になって、もっとたくさんおきゅうりょうくれる会社にてんしょくできるかもしれないじゃん!
【回答】哲学者 大竹稽さん「生きている限り不安なんてなくならない」
2020年のお正月。どんなお正月でしたか?「一年の計は元旦にあり」ってことで、相談者さんも今年の抱負を書かれたかもしれませんね。
「は?一年の計?なんなの新型ウイルスって?ぜんぶオシャカなんだけど!いつまで続くの、この状況!」おっとと。それ、わたしも……。元旦に立てた計はすべて白紙になりました。
ところで、一つうかがいます。「恐怖と不安」果たしてどっちがやっかいでしょう? あなたが恐怖するものはなんですか?高所?暗所?あるいは虫(台所に出没する、黒光りするアイツ)とか?
じゃあ、不安は? 真っ暗闇に放り出されたとき、暗闇の恐怖はロウソクで解消されます。でも、不安は続きますよね。なぜなら、その先がどうなっているかロウソクではわからないからです。
なにを自分が恐れているのかわからない。だから不安は生まれる。
今回の新型ウィスルが引き起こしたこの状況で、「仕事」「生活」「感染」など、そりゃもうたくさんの不安が生まれています。そして「未来が浮かんでこない」が世界共通の不安を的確に表現しているでしょうね。
「苦しむかもしれない。そんな不安であなたはすでに苦しんでいる」、我が師モンテーニュの言葉です。
「◯◯かもしれない」。◯◯には、無数の言葉が当てはまります。感染するかもしれない。仕事がなくなるかもしれない。貯金がなくなるかもしれない。そして死んでしまうかもしれない。
間違ってはいけないのが、この不安の原因をなにか(だれか)に特定し、そこに怒りやイラつきをぶつけてしまうこと。それは悪行、自らを孤立させ自らの首をしめる悪行です。
「かもしれない」は、ぼくたちの思考に宿るメカニズムなのです。だから、不安なんてなくならない。まずここから、始めませんか?
すると、不安にもいくつか種類があることが見えてくるはずです。今日明日ではどうにもならない不安もあれば、今日の一歩で軽くなる不安もあります。
「感染するかもしれない」だったら感染させないようにしましょう。
「これまでの生活ができなくなるかもしれない」だったら、これまでの生活を見直しましょう。
不安は解消されないけど、行動につなげられるんですよ。不安は思うようにならないけど、行動する(準備する)ことは思うがまま。これでいいじゃないですか。これが、パスカルのいう人間の偉大さなんですね。
撮影・取材・文/大竹 稽