COSME DE NET

FOLLOW US

  • .&cosme
  • .&cosme
  • .&cosme

Inner Care】【COLUMN

2019.10.27

心に引退はないですよ。

みなさん、こんにちは。
大竹稽がお送りする「禅の美容室」。

先月、わたしの住む三浦半島を台風が直撃。結果、21時間の停電に。停電時間中は生活がまったく機能せず。三浦だけでなく鎌倉や横浜横須賀も大規模停電になりました。「こりゃ大変だ!」と思っていましたが、房総半島の被害はわたしたちのそれとは比較にならないレベル。電気依存というのも考えものですね。

そんなてんやわんやの9月を超えての10月。気候も涼しく、心も穏やかになれそうです。

いっぽうで、おいしそうな匂いが、そこかしこでわたしたちの鼻と胃袋をくすぐる時期。なにごとも「過ぎたるは」の精神で、バランス良く気持ち良くこの秋を楽しみたいものです。

さて、今回から、静岡県浜松市にあります方広寺の巨島(おおしま)和尚にお話をお聞きします。

方広寺は臨済宗大本山の一つですが、山間にあるためなかなかの秘境お宝スポットになっています。かの地のみなさんも、心が穏やかでのんびりしています。その鍵はどこにあるのでしょう。

働き方改革と無縁でも……。

「働き方改革ってなんですか?」と聞かれたら、みなさんはどう答えられますか?

キャッチプレーズは「一億総活躍」。

これを言い換えれば、長時間労働、非正規雇用、退職制度の変革となるでしょう。

まぁ、「一億総活躍」のような、だれにとってもきれいに見えるフレーズにもやもやしてしまうのは、哲学を専門にしている人間の性でしょうか。

社会の仕組みとしてあることと、本来あるものは別の次元。自分の働きを決めるのは、社会の仕組みではなく、自分自身です。

「働き方改革」が言い立てられるずっと前から、死ぬまで、しっかり毎日、やるべきことをしつづけてちゃんと活躍している人たちがいます。

そんな人たちの心は、総じて元気!

方広寺がある浜松市北区のおじいちゃんおばあちゃんも、派手な看板「一億総活躍」が登場する前から、昔から変わらず活躍しています。

死ぬまで法話をする。

「方広寺の前の管長でいらっしゃった大井際断老師が亡くなられたのは、去年の2月のことでした。103歳でした。老師はよく『死ぬまで現役』とおっしゃっておられましたが、まさにこの『死ぬまで現役』を貫き遷化されました」

方広寺の教学部長でいらっしゃる巨島和尚は、大井管長の活力を目の当たりにされてきました。わたしも遠くからお姿を拝見したことがありますが、100歳を超えられていました老師の足取りに驚きました。階段を、一歩、一歩、降りてこられる様子は、「定年」の二文字はみじんも感じられませんでした。

みなさん、いかがでしょう?

大井老師の人生からわたしたちが学べること、それはなによりもまず、「本当に老いるのは身体ではなく、心」ということ。

暦で100を数えなくても、老いてしまう心であれば、身体もそれに従ってしまいます。

暦上では百歳でも、心が元気であれば、身体も元気なのです。

心はいつも現役。

「当たり前のことですが、心に定年はありません。わたしたちの心は、死ぬまで現役なのです。定年や引退は、だれが決めたのですか?社会の決まりとしてあるのですが、それは単なる区切りとしてあること。区切りはメリハリのためにあることで、引退とは違います。区切りを終了と勘違いし、「定年後は働かない」のは、思い込みです。心は終生、現役でいられるはずなのに、それではもったいないですよね」

 

「心は生活に現れる」は言い得て妙ですね。「心を美しく」と心に注目するよりは、まず、日常生活や働き方を見直してみましょう。あ!もちろん、このアドバイスが「働き方改革」と一線を画すものです。だれかに命じられたからとか、社会のルールだからとかではなく、自分の裁量でやってみましょう。

 

次回も方広寺からお届けします。

おじいちゃんおばあちゃんが笑った顔、素敵ですよね。

文・写真/大竹稽(思想家、教育家)