みなさん、こんにちは。
大竹稽がお送りする「禅の美容室」。
7月後半から学校は夏休み。この時期、お母さんたちを悩ませる宿題が「読書感想文」です。私が執筆している『読書感想文書き方ドリル』を毎年出し続けて6年目、今年の課題図書には、「心」を扱うものが多くあります。これは、顕著な特徴ですね。目に見えるものばかり追い求めていませんか?そんなメッセージを小学生たちが受け取っています。
これは美容にもつながるテーマですね。
今回は、西伊豆松崎町にある名刹、帰一寺の田中道源和尚に話をうかがいました。このお寺は「世界の中心で、愛をさけぶ」のロケ地にもなっています。伊豆観光にどうですか?
テキトーにこなしていませんか?
「おはようございます」
「こんにちは」
「いただきます」
「ごちそうさまでした」
あいさつの大切さは、だれもが認めるところです。ところが、しばしば成人すると、その大切さを忘れてしまいがち。いちおう、「おはようございます」とあいさつはするんですけど、惰性でしている自分がいたりします。そんな自分に気づかされるのは、子供たちからの「おはようございます!」。道ですれ違うとき、なんとなぁく、ただ通り抜けようとする心の姿勢を、「おはようございます!」が正してくれますね。「ああ、心がたるんでたな!」と叱ってくれます。もちろん、子供はただあいさつしているだけですが、「しっかりしなきゃ」、と反省するわけですね。
心の美しさは、他人を思いやる心から。
自慈心、こんな言葉を聞いたことがありますか? self-compassionという英訳が当てられますが、自分を慈しむ心です。
とはいっても、エゴと自慈心はまったく別物。そのポイントは、「他者への思いやり」と「自分への思いやり」が繋がっているところです。
他人には厳しく、自分に甘い心はエゴですね。他人を思いやり、自分を慈しむ心が、自慈心です。
現代は、この自慈心が失われている、と心療の専門家が警告しています。それはつまり、自分のことで手一杯になってしまっている状況の裏返し。自分が、自分が………と得ることばかりにとらわれず、まず、他人にプレゼントしたり、他人にゆずったりしてみましょう。そこからきっと、自分を慈しむ心が生まれてきます。
他人に席を譲る人は、自分に席が譲られる。
他人に声をかけられる人は、自分も声をかけられる。
他人の労苦をねぎらう人は、自分の労苦に支援がある。
他人の体を気遣える人は、自分の体も大事にできる。
順序を間違えると……エゴのわなに陥ってしまいます。
自分の席を!自分だけ苦労を!自分の体だけ!だと、席は回ってこないし、苦労してばかりになり、体の劣化が進みます……。ということですね。
田中和尚は、このようにまとめてくれました。
「美しさの根底にあるのは、他人への思いやりです。すぐに自分の心が美しくなったとは感じられなでしょう。他人を思いやることで、がっかりしたり、疲れてしまうことがあるかもしれません。それでも、思いやりを持ち続けてみてください。かならず、あなたの心が落ち着き、心が美しくなってくるはずです」
文・写真/大竹稽(思想家、教育家)