みなさん、こんにちは。
大竹稽がお送りする「禅の美容室」。
肌にしみる冬の寒さが始まっています。そんな季節に、ホッと心が温まるひとときをあなたに贈れますように。
これから三回、神奈川県伊勢原市にあります能満寺の松本隆行和尚に登場していただきます。松本和尚と大竹はいっしょに本を作っていますので、気になる方はアマゾンで検索してくださいね。
お寺には畳の部屋がある。
「禅寺」という言葉であなたはどんなことを連想するでしょうか。
京都の観光地ランキングとして上位に入るお寺の大半は、禅寺です。金閣寺や銀閣寺、そして龍安寺などが挙げられます。
さて、そんな禅寺であなたはなににときめきますか?
石庭ですか? 龍安寺の石庭はファンタスティックですよね。日本史の教科書には、苔寺の枯山水が必ず載っています。
桜や紅葉? 東福寺の紅葉は目を見張ります。
池もありますよね。金閣寺の池は、鏡湖池(きょうこち)と名付けられています。
でも、石庭や桜がどのお寺にもあるとは限りません。池なんてなおさら。しかし、どのお寺にも必ずあるものが……それは畳の部屋です。
ソファに座っているとき、体は安定していない。
美容について話しをしていると、どの和尚も「その秘訣は日常生活にある」と仰います。
背筋が曲がった和尚にお目にかかったことはありません。高齢のおじいさん和尚でもシャキッと背が伸びています。
さて、お寺の日常生活には、現代の一般人のものとどのような違いがあるのでしょう。
「わたしたちは畳の上で生活しています」
と、松本和尚。
しかし、畳の上で生活することは美容にどのようにつながっていくのでしょうか。
「ソファに座っているとき、リラックスしているように感じますが、わたしたちの体は不安定になり変なところに力が放っています。いっぽう、畳に座ると自然と背筋が伸びています。仙骨に自ずと意識が向くからですね。この仙骨が、姿勢の美しさの要になるんです」
仙骨とは、脊椎の下にある、骨盤の上方後部の大きな三角形の骨です。たしかに、畳に座っていると、仙骨が体を支えていることがよくわかります。ふかふかのソファではこの感じは得られません。
日常の姿勢が美容につながる。
「毎日、わたしたちはこのような生活を送っているので、自然と姿勢がよいのでしょう。姿勢がいいということは、体に負担がかからず、血流が良いということです。スキンケアを気にしたことはないですが、美容のポイントはこの辺りにありそうですね」
西洋流の生活が悪いのではありません。ただ、毎日、体に負荷をかけていたら、どこかに歪みがでてしまう、ということでしょう。
「でも、そんな生活したいけど……和室なんてそうそうないし」
そうですよね。でも、探してみてください。近くにさまざまなイベントを開いているお寺があるかもしれませんよ。そこで、定期的に、数時間でも畳の上に座る習慣を作ってみませんか。
文・写真/大竹稽(思想家、教育家)