“化粧ぬかをより身近に”。その想いが生んだ米ぬか石鹸。
昔から美肌に欠かすことのできなかった「京小町ぬか」。すごくいいものではあるのだけれど、ただ一つ欠点があるとすれば、少し使うのに手間がかかることだろうか。顔を洗う度に洗顔フォームに取り出さなければいけないし、保存も冷蔵庫でしなければいけない。もっと簡単に肌が弱い方にも使ってもらえる石鹸とかを作りたいなと考えていたとき、九州で無添加石鹸を作るラ・コンテスとの思わぬ出合いがあった。
「成分にすごくこだわった石鹸作りをしているので、美肌効果の高い米ぬかを使った石鹸を作りたいと思っていたんです。米ぬかは精米すれば出てくる珍しいものではないのですが、もっとなにかいいものはないだろうかと探していたときに、京都に精米を4回したときに出る白ぬかのみを使った肌に優しい化粧ぬかがあるという噂を聞きつけたんです」とラ・コンテスの小林繁利社長。そこから「京小町ぬか」を石鹸に配合する共同開発が始まった。
美肌成分を壊さないように時間をかけた特別な石鹸作り。
ラ・コンテスの作る無添加石鹸は、コールドプロセス製法で作られるのが特徴だ。コールドプロセス製法とは、火などを使わずに原料油脂と苛性ソードによる化学反応熱だけで石鹸を作る製法。「この製法だと、40℃前後ぐらいまでしか温度が上がりません。だから、高温による酸化などで油脂を傷めることがないんです。そのため原料油脂の性質を最も活かした石鹸が作れます」と小林さん。
また、塩析による副産物の除去などを行わないために、油脂の中に含まれるグリセリン(保湿成分)もそっくり石鹸の中に閉じ込められ、スクワランやステロール、ビタミンA・B・Eなど肌に良いとされる成分も石鹸に残ったままに。副材として配合する植物エキスなどの美容成分も熱によって破壊されてしまうこともない。
「石鹸成分を安定させるために1か月以上乾燥熟成させる必要があったり、時間はかかるし量も多くは作れないですが、油脂の特徴を活かしたこだわりのある石鹸を作ることができるんです」。
コールドプロセス製法による石鹸作りは、以下のような工程で行われる。
たっぷりの天然成分だからこそ、肌本来の力を引き出させる。
防腐剤や合成界面活性剤などはもちろん使用しない。使う油脂もオリーブ油やスイートアーモンド油など天然の植物性オイル。そこにたっぷりと「京小町ぬか」を配合する。コールドプロセス製法は、他の石鹸作りの方法より天然の美容成分を多く含んでいるのも特徴だ。
「ぬかが多すぎると油脂と分離してしまい石鹸がもろくなり、泡立ちも悪くなるんです。でもできるだけたっぷり入れたい。その配合が難しかった。肌の弱い方や子供からご年配の方まで、多くの方にモニターになってもらいながら使用感も伺い、何度も何度も繰り返して作りました」と小林さん。そしてようやく完成したのが「京のこまち」だ。
封を開けるとラベンダーとイランイランの爽やかな香りがした。「ぬかの香りにこだわるのではなく、顔を洗ったときに気持ちいと感じてほしくてエッセンシャルオイルも配合してもらいました」と懐古庵の鷲尾さん。
幸せな気分になる泡で爽快気分。
さっそく泡立ててみた。泡立てネットを使うとブクブクとふわふわのキメの細やかな泡が次々に生まれてくる。それに弾力がすごい。顔にのせるとなんともいい香りがする。柔らかい泡に包まれると、なんとも幸せな気分だ。水で流した時の泡切れもよく、洗い上がりはほのかな香りが残って爽快。肌もツルンとしてつっぱったような感じがまるでしない。
「赤ちゃんにも使える優しい石鹸を目指しました」とラ・コンテスの小林さん。
「肌の弱い方にこそ使ってほしいですね」と懐古庵の鷲尾さん。
「京のこまち」。そんな二人の思いがひしひしと伝わってくる石鹸だ。
撮影・取材・文/楠井祐介