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MAKEUP】【COLUMN

2020.06.27

メイクの仕上がりがまるで違う!匠の技で作る究極のメイクブラシ(前編)

目利きによる極上の素材選びと、卓越した職人技が光るメイクブラシ

初めて筆先を肌に触れさせた時、しっとりと吸い付くような感触に驚いた。この筆は、最高級メイクブラシ「BISYODO」のフィニッシングパウダーブラシだ。いい筆と聞いて勝手に想像していた、ふんわりとしてさらさらなエアリータッチとは全く違っていた。普段もちろんメイクをしていない男性なのでメイクに詳しいわけではないのだが、“これは美しい肌に仕上がる”と一瞬で思わせてくれる優しく肌をなでる感触がそこにはあった。

日本で唯一の原毛輸入加工会社が作る極上の1本。

今回の美の工場見学は、大阪・八尾市にあるメイクブラシ「BISYODO」を製造するウエダ美粧堂。メイクブラシといえば、広島の熊野筆を思い浮かべる方も多いかもしれない。しかしこのウエダ美粧堂は、原毛を輸入するところからはじまりメイクブラシを作る、日本で唯一の原毛輸入加工会社である。もちろん、熊野筆の多くのメーカーにも高品質な原毛を提供している。それだけに毛材質には徹底したこだわりを持っている。「ブラシ1本作るにせよ、松リスやカナダリス、イタチ系のコリンスキーやヤギなど様々な天然毛材質を使います。それらをどうブレンドするかによって、細い線がかけたり、ふんわり柔らかな仕上がりになったりと変化します」と今回案内をしてくださった、統括部長の植田良子さん。ヤギの毛に至っては、まるで食肉のように部位ごとに分けられ、毛質や毛の長さなど全く異なるのだそうだ。最も柔らかいのは首周りの毛で、細光峰(サイコウホウ)や短光峰(タンコウホウ)などさらに細かく分けられている。そんな目利きと匠の技で作られたメイクブラシ、国内外の有名ブランドのブラシを作るほか、多くのメクアップアーティストさんなどにも愛用者が多い。

“肌を絶対傷つけない”その想いが究極の肌触りを生み出す。

目利きによって選び抜かれた原毛は、ヨーロッパドレスと言う独自の精毛技術で、原毛を傷めることなく、本来の滑らかさやコシを引き出す。
目利きによって選び抜かれた原毛は、ヨーロッパドレスと言う独自の精毛技術で、原毛を傷めることなく、本来の滑らかさやコシを引き出す。

まず最初に案内していただいたのが、大きな釜。ブラシ作りはこの釜で原毛を洗ったりすることから始まる。この過程を“精毛”といい、単に汚れを取るだけでなく原毛本来の美質、毛の滑らかさやコシなどを引き出す工程で、ブラシ作りで最も大切な工程のひとつだそうだ。日本伝統の精毛では「水炊き」→「乾燥」→「灰もみ」という工程を行うそうだが、どうしても毛が傷んでしまう。ヨーロッパではこの一連の作業を薬品を使って行うという。「そこでヨーロッパの精毛技術を研究し、薬品の割合や温度などに工夫を凝らした“ヨーロッパドレス”という独自の精毛技術を開発しました。これで原毛を傷めることなく、本来の美質を引き出すことに成功したんです」と植田良子さん。

手作業の根気と職人さんの技量に感心。

毛先が切れた毛などを見つけて1本ずつ手作業で抜いていく。肌を傷つけないように、究極の肌触りにするために自然なままの毛先のみを使う。
毛先が切れた毛などを見つけて1本ずつ手作業で抜いていく。肌を傷つけないように、究極の肌触りにするために自然なままの毛先のみを使う。

美質を引き出された原毛は束にされ、今度はその無数の毛の中から1本1本切れた毛や悪い毛などを取り除く作業を行う。それも手作業でやっているから驚いた。「白く光っている毛が切れた毛なんです。これにナイフをひっかけるようにして引き抜いていきます」と職人さん。すごい手際の良さで悪い毛を次から次へと引き抜いていく。それを一つの束で5回6回と何度も繰り返して行う。多いものだと8回くらい繰り返すそうだ。頭がくらくらとしてしまうほど気の遠くなる作業。「BISYODO」メイクブラシの特徴は毛先をカットせず自然なまま束ねること。この作業を入念に行うことで肌触りがまるで違ってくるという。

毛先を形つくるコマに毛を詰めていく。
毛先を形つくるコマに毛を詰めていく。
何段にも積み上げられた棚には、オリジナルのコマが何百個も入っている。
何段にも積み上げられた棚には、オリジナルのコマが何百個も入っている。
自らコマを作る現会長の植田 孝さん。コマを作る機械まで設計した。工場にあるほとんどの機械は孝さん自らが設計したり作ったりしたもの。
自らコマを作る現会長の植田 孝さん。コマを作る機械まで設計した。工場にあるほとんどの機械は孝さん自らが設計したり作ったりしたもの。

整えられた毛は、穂先を作る最終段階に。コマという型に入れて穂先を形作り束ねられていく。なんとこのコマも自社で作っているという。「使い勝手の良さは、穂先の形がすごく重要になってくるんです。自社でコマを作るとすぐに試すことができるから」と現会長の植田 孝さんがコマ作りを実演してくれた。「メイクブラシは肌に直接触れるものだから、肌を傷つけては絶対にダメ。いかに肌に優しくするかは原毛の毛先の活かし方にかかっているんです」と。

様々な手作業を得てようやくブラシが完成!
様々な手作業を得てようやくブラシが完成!

できあがった穂先は金具で柄と固定し、ようやく1本のブラシが完成した。「金具の中はしっかりと糊付けされているので、水洗いしても中に水が入ることはありません。だから安全に長く使っていただけます」と植田良子さん。初めて触れた時に感じた、しっとりと肌に吸い付くようなあの独特の感触は、こうした丁寧な手仕事ひとつひとつの賜物だ。

明日の後半では「BISYODO」メイクブラシの魅力をお伝えします。お楽しみにしてください。

 

撮影・取材・文/楠井祐介