こんにちは、美容ジャーナリストの山崎多賀子です。自分が乳がんになって感じたこと、気づいたことで、みなさんのお役に少しでも立てれば…そんな思いでスタートした連載です。どうぞ!
口紅を塗るという行為。
電車内で化粧をする女性、相変わらず減りません。最初は嫌悪感しかなかったけれど、周囲の視線をものともせず、揺れる車内で鏡を覗き込み、下地からアイライン、マスカラまで一心不乱に仕上げ切る精神力と集中力に感心してしまう。いやいや、感心している場合ではない。やはり人前で化粧するのはアウトでしょう。
すっぴんか、ホームの陰で化粧するか……トホホな究極の選択(私の場合)。
しかし……偉そうなことを言えない。フリーランスで外出の時間がまちまちな私は(←ここ言い訳)、仕事に出かけるギリギリまでPCに向き合っているのが常で、ㇵッと時刻を見てすっぴんのまま飛び出してしまうことがある。化粧をする場所も時間もないなかで脳裏をよぎるのは、「この眉無しの般若顔で仕事先に行ったら、引かれること間違いなし! でも絶対に遅刻はできない」。
こんなとき、ああごめんなさいと、駅のホームの隅っこの柱に隠れて、ちゃちゃっと眉を描いたことあります。1人、2人に見られたな……多分。タクシーの中では、運転手さんに恥を忍んでお断りし、フルメイクしたことが何度かあります。
外出する日は、最低限のメイクをしてからPCに向き合おうと心掛けているのだけれど、切羽詰まるとスコーンと抜けてしまうトホホな私。
食後に人前で口紅の化粧直しするのはマナー違反?
前置きが長くなりましたが、人前での化粧はマナー違反というのは当たり前。だけれど私は、尊敬するエレガントな美容家の方から30年以上も前に「例外として食事後に淑女がささっと口紅を塗り直すことは、エチケット違反ではないのよ」と教わったことがある。そうなのか、おしゃれした女性が美しい仕草で口紅をつける姿はエレガントかもしれないと、感じ入ったものだ。あくまでエレガントに塗る、という塗り方やシーンの限定つきだが。
たしかそのころ、小さな鏡がついたリップケースが流行っていて(今もある)、私も使っていた。これなら鏡のない場所でささっと口紅を塗り直すのに便利だと思った。ただ、確固たる化粧のマナーというものが定着していないので、口紅だけは人前で塗り直してよい、と今言っても通じないかもしれませんが。
メイクの仕上げの口紅を塗る行為は出陣式のようなもの。
それでも化粧の最後に口紅を塗る行為は、他のアイテムに比べてエレガントで特別という思いは変わらない。尊敬する美容家の影響もあるかもしれないけれど、口紅を丁寧に塗って輪郭が歪んでいないかチェックし、「これでよし!」と心地よい緊張感と気合を込めて鏡を閉じ、人さまの前にでる。ちょっとした出陣式のような感じがある。
2020年春限定!桜をモチーフにしたゲランのルージュ ジェに心ときめく✨
久しく忘れていた美容家のその言葉を思い出したのは、先日のゲランの発表会で限定のリップケースを見たとき。ゲラン ルージュ ジェ リップスティック(¥6,400、ケース¥2,700、カラーリフィル¥3,700・すべて税別/ゲラン)
ご存知、ルージュ ジェは、リップスティックとケースが別売りで自由にカスタマイズできる口紅。リップスティックを引き抜くと、ケースの蓋がパカッと開いて、鏡が現れる。
自己満足だけではもったいないので、周囲の女性にも見せびらかしたい!
今度、しゃれたレストランに行ったとき、テーブルでとりだして化粧直し、してみようかしら。
文・製品写真/山崎多賀子