美のプロだからこそ知る、きれいの裏側を覗く好評連載。ご登場いただくのは、日本の美容シーンを牽引する、トップヘア&メイクアップアーティストの黒田啓蔵さん。日本を代表する名女優たちと現場を共にするなかで、黒田さん自身が彼女たちから学んだことや教わったこと。また、各現場で大活躍の自腹買いアイテムなど、幅広い質問にお答えいただきました。
多くの有名女優さんとお仕事されている黒田さん。みなさんから影響を受けたことは?
「やはり一流の女優さんは、みなさん本当にきちんとされていますね。生活のリズム、自分のリズムが整っている。人気が長続きしている方は、大概、プライベートもきちんとされていますよ。食生活も身のこなしも。とにかく丁寧に生きてらっしゃいますね。
若い方は、それこそパワーがあるから多少の無茶はできるでしょうが、30歳以降になると、自分に寄り添って生きていくことが大事です。それをみなさん、すごく意識されていると思います」
みなさん多忙な毎日でしょうに、“丁寧に生きる”なんて、さすがですね!
「それがプロフェッショナルなんでしょうね。自分の職業がどれだけ好きで、そこに誇りと責任を持っているかが、生活に現れていると思います。お酒が好きなイメージのある女優さんも、禁酒期間をきっちりつくり、身体のコンディションを整えてらっしゃいます。
たまに、忙しすぎて自分のリズムが壊れてしまう方もいるんですが、やっぱり心身共にボロボロになってしまうから、このままじゃいけないって気付くんですよね。そこで立て直すんです。自分を律する姿勢は、本当に学びが多いですよ」
繊細な仕事の黒田さん。ご自身の、メンタルの保ち方は?
「寝ること(笑)。寝ないと人間はダメですよね。思考回路が鈍って、正しい判断がつかなくなりますから。最低でも6時間は寝るようにしています。
あとは、仕事で遅くなっても、キッチンに立って野菜を刻んだりしていると、ストレス解消になりますね。このように気持ちが切り替わるスイッチは、たくさん持つようにしています」
お休みがない月もあるそうですが、そのパワーの源は?
「最近HGHのサプリを飲んでるんですが、すごく調子がいいです。ヒト成長ホルモンの一種なんですが、飲み始めてから疲れにくくなった気がします。これのおかげでハードスケジュールも元気にこなせているのかな」
黒田さんの元気の源「白寿H.G.H(白寿BIO医研)」。美肌づくりやアンチエイジング効果も高いそう。
どんな撮影現場にも必ず持っていく、自腹買いアイテムを教えてください。
「化粧水ならリサージ ボーテ スキンメインテナイザー(180ml ¥10,000・税別/リサージ ボーテ)。これはどのお肌にも合う万能性があって、バランス感がとてもいい。DEWブライトニングローション(150ml ¥4,000・税別/カネボウ)も即効性があり、すぐに肌コンディションを整えてくれるので気に入ってますね。
さらに、NARSのソフトマットコンプリートコンシーラー(¥3,600・税別/NARS)。元々、コンシーラーはあまり使わなかったのですが、最近のものは進歩が目覚ましく、このコンシーラーは、肌に溶け込んでくれるので、よれやすい目まわりに使っても、シワにならないからビックリ。目元のくすみやシワが気になる大人女性でも、テクニックいらずで、明るい印象に引き上げることができますよ。
黒田さんのお眼鏡になかった『メイク用綿棒(ミリビィ)』。形状の違う先端が使う幅を広げる。
『DAIYA FUDE フェイス デュオ(SHISEIDO) 』も黒田さん一押しのメイクブラシ。
最後に、大人女性がメイクするうえでのアドバイスをお願いします。
「完璧を求めすぎないこと。何事もやりすぎは禁物です。40歳すぎて、完璧を求めてきれいにつくり込みすぎると、逆に老けて見えてしまう。ワンポイント集中型にしたほうが、時間も省けますし、見せたい部分が際立つので華やかになります。
お肌をきれいにつくったら、パーツのポイントは一点集中。赤みがきいたリップを使ったらチークは薄めにするとか、目元に色をしっかりのせたら、リップはベージュ系でおさえるとか。そういう足し引きのバランス感覚が、30代後半〜40代は、すごく重要になってきますね」
その他、気をつけるべきパーツは?
「眉毛。濃く描きすぎている人が多い印象です。アイブローカラーはブラウン系を使ってみたり、本来の眉の色が薄い人は2種類くらい色味を重ねると、きれいに見えますよ。
ペンシルで描いてそのままではなく、仕上げにパウダーをのせたり。最近のパウダーは何色も入っているので、眉頭は薄い色を使い、眉尻にかけて濃い色を重ねていくと、眉が立体的に見えてくるんです」
おすすめの眉を描くアイテムを教えてください。
「VISSEのソフト&スリム アイブロウペンシル(¥800・税別/コーセー)は気に入っています。自腹で3色すべて買ってしまうほど。細さと柔らかさがちょうどよく、年代問わず、これがいちばん描きやすいと思います」
眉の場所で色を変えるなんて、考えたこともありませんでした!
「でしょう? でもそれだけで顔自体も立体的になり、小顔効果につながるのでぜひお試しを。まつ毛と眉毛って、顔のパーツの中でも重要な部分だけど、いちばん簡単に、劇的に印象が変わるのは眉毛。同じトーンで描いてしまうと、平べったく見えてしまうんです。また眉頭が濃すぎると、険が出てしまうから注意。眉の濃淡は、顔に立体感を生み、ゆるくなったフェイスラインを引き締めてくれるから本当に大事。ひと手間かけるだけで、大きな変化を生むんです」
前編でお話しいただいた、メイク前のスキンケアなどひと手間が、より美しくしてくれるんですね。
「そうです。ちょっと自分に手間をかけてあげる。ほんの少しのことなんですが、それだけで全然変わるんですよ。ひと手間かける心の余裕が、お肌やお顔の伸びやかさ、軽やかさにつながる。大事にしてほしいですね」
キレイをつくるのは、メイクでかける“ほんのひと手間”。この心の余裕が、健やかな肌、しなやかな表情をつくるのですね。穏やかな語りのなかに、ハッとさせられる気づきが、たくさん散りばめられていた黒田さんのお話。参考にしてみてくださいね。
撮影/cheki(WILL CREATIVE) 取材・文/井上幸子