みなさん、こんにちは。
大竹稽がお送りする「禅の美容室」。
令和二年になりました。初詣でみなさんはどんな祈願をされたのでしょう?
私の周りの禅僧たちは、祈願ではなく、誓願とおっしゃいます。ということで私も、とある場所で誓願してきました。
「娘が生きる未来が、自然豊かで人間らしくありますように…」
さて、新年最初のコラムは、もはや著名中の著名である川野泰周和尚のお話。川野和尚は建長寺派の禅僧であると同時に、精神科の医師でもあります。いまや「心」とくればマインドフルネス。そしてマインドフルネスといえば川野和尚、著作も多数あります。和尚のお寺、林香寺は横浜市磯子区にあります。
心の軸。
自分の強みを持とう!
ブレない自分でいよう!
そんな意気軒昂(けんこう)なアドバイスに、しばしば登場するキーワード、それが「心の軸」。
心の軸をもつことで、どんなシチュエーションにもブレずに踏ん張ることができる。そんな理屈ですが……。
実はこの「心の軸」が危うい。
このような軸は、実はメンタルブロックなんです。
「ブレない」という安心をするために、「寄せ付けない」壁を作る。そんな作用をしてしまうんですね。
しかし、この安心は仮のもの。ほんとうの安心ではありません。
「軸」というのは不変の「自分」を想定しています。いやな上司だろうがいやな知り合いだろうがいやな仕事だろうが、「いやな」顔などせずに、澄ましていられる。
いやはや、そんなブロックこそ、自分に重くのしかかってきますよ。
心をギアチェンジさせていく。
いやな上司がいたら、「いやだな」と思う。至極当然です。
心は、その場その場でさまざまな姿を見せます。
そんな心を認めてしまいましょう。
あ!そうそう。
配慮すべきことが一つ。「クソ」とか「ハゲ」とか「カス」とか、口に出してしまうと、その言葉はいやな部下どころか、自分も傷つけます。
さまざまな姿をする心を、そのままにしておく。
それでいいんです。
本当の心は可変です。ほんとうの「安心」は、心をギアチェンジさせていくことなのですね。
上り坂なら、ギアを落としましょう。
下り坂ならエンジンブレーキをかけましょう。
道や坂の角度で反応するのが心。いつも平坦な道のような心にしようとなんて、決して思わないでくださいね。
上り坂下り坂、道路の状況に合わせて適切なギアにチェンジしていく。
そんな心のありようを「心がけて」みませんか?
文・撮影/大竹稽