みなさん、こんにちは。
大竹稽がお送りする「禅の美容室」。
暑くなりました。今年は、早々と五月から猛暑になっていましたが、これからどうなるんでしょう?
こんな時こそ、「インナービューティー」。禅はそこに力を発揮します。
さて、五月二回目から、横須賀満願寺のご住職、永井宗直和尚に登場していただきます。今回は永井和尚最後のお話。「メリとハリ」についてです。
メリハリって?
いきなりですが、「メリハリ」の「メリ」ってなんでしょう?
「ハリ」のほうは、推測できますよね。ハリのあるお肌のハリでしょう。では「メリ」は? お肌にメリなんてあるんでしょうか?
「メリハリ」は、もともと「メリ(下がり)カリ(上がり)」で、音楽用語だったようですね。つまり、音の抑揚のことです。「メリカリ」が転じて「メリハリ」になったのですが、まぁ、「カリ」よりも「ハリ」のほうが、日常的にイメージがつきやすかったのでしょうね。
さて、そんな「メリハリ」、「仕事のメリハリ」「生活のメリハリ」「職場のメリハリ」のように使われます。「緩めるところと張りのありところをつくる」という意味ですね。
メリハリはリズム
「メリハリ」は、美術においても大事なテクニックです。
「書にもメリハリがいるんですよ。同じような筆圧で書かれた書は、まったく美しくない。同じように、生け花にもメリハリがいるんです。豪華に盛りつけただけの花は、むしろ気味が悪い」と、永井和尚は話します。
「日本の美には、空白という間がある。日本の美は、間の美である」
フランスの思想家や美術家は、日本の美についてこんな素敵な分析をしているのをご存知ですか?
アメリカの映画は、初めから終わりまで、ギンギンギラギラもうてんこ盛りです。日本の映画には、アメリカでしたら「手ぬかりですか?」と言われてしまいそうな、空白の間があります。
同じことが、日本の庭園や建築にも言えますよね。
もちろん、永井和尚がおっしゃるような、「書道」「花道」はじめ、他に「道」のつくものにも。
そして……。
「メリハリは、心にもあるんですよ。すぐに効果が欲しい、そんな速さを求めるだけではだめです。速さではなく、密度を上げていきましょう。密度は、メリハリに注意することで、上がっていきます。速度を上げようとすると、ハリハリばかりになってしまいますが、それはいつか必ず、途切れてしまいます。メリとハリが大事。これが持続的な効果へとつなげていくコツですね」
緊張しつづける心には、いつかプッツンがきてしまうでしょう。ダラダラばかりも、もちろん、美しくありません。
さて、みなさん。今日、一日どんな日になるでしょうか? 心にメリハリはあるでしょうか?
文・写真/大竹稽(思想家、教育家)