大阪長屋の古民家に暮らし始めて数年。だんだんと時間の流れ方や物事のとらえ方がじわじわと変わってきました。今年もそんな日々の暮らしの中で感じたことと美容について(まるで古民家暮らしとは関係のないことも多々ありますが…)、気の向くままに書いていきたいと思いますのでどうぞお付き合いよろしくお願いいたします。
ある日目にしたおしゃれなクッションから坐禅をするように
一年の計は元旦にありではありませんが、みなさんは今年から何か始められたことはありますか? 僕は昨年末に思い立ったように坐禅をしたくなり、1月から始めることに。なにも世界中で注目されているようなマインドフルネス(今ここにある状態に意識を集中させることで、脳を活性化し、ストレスを軽減させて仕事のパフォーマンスなどを向上させる)などというような高尚な考えに感化されたわけでもなく……。
実は年末のある日、梅田の蔦屋書店で展示されていた「ZAF」なるクッションが目に付いたからという、単なるそんな理由から。コロンとした丸い形の可愛いクッションだがクッションにしては少し硬い。色もおしゃれで気になってポップを読んでみると、何やら坐禅用の座蒲団である「坐蒲」というものを現代の家でも合うようにおしゃれにしたものらしい。坐蒲を使って正しい坐禅の姿勢をとることで骨盤がスッと立ち、心身のリフレッシュをサポートしてくれるのだそうだ。普段ソファーなどに座っていると、どうも腰が痛くなる。少し猫背気味でもあるので、これを見た瞬間、「そうだ! 来年から坐禅を日課にしよう」と思い立ったのだ。
「ZAF」には、外布がスウェード調の合成生地で中材に天然素材のパンヤ綿を使用した「ザフマスター」(直径300mm×高さ150mm \9,500・税込/サカエ金襴)と外布がポリエステルで中材にポリエチレンパイプを使用した「ザフエントリー」(直径300mm×高さ150mm \4,800・税込/サカエ金襴)の2種類がある。ザフエントリーは麻と綿でできた専用の「ザフカバー」(¥3,500・税込/サカエ金襴)をするのだが、ザフマスターやザフカバーの色が大人っぽくおしゃれなインテリアにもなるカラーリングなのだ。一見するとまさか坐禅用とはまるで分らない。(我が家は古民家でもあるし、ここまでおしゃれにする必要もないと感じ仏具店でもっと安価に売られているものをネットショッピングしたのだが……。そちらは外布が黒色綿で中材がパンヤ綿を使用した「坐蒲」(直径300mm×高さ150mm ¥4,950・税込/滝田商店)。
日々少しの坐禅でも生み出される心地のいい爽快感。
坐蒲が届き、帰省から戻った1月5日から坐禅を始めている。まだ朝と寝る前に12分ずつという短い間だけだが、坐蒲を使ってすぐに気づきがあった。何もない状態で坐禅を組んでもどうしても腰が沈んでしまう。そして背筋を伸ばそうとするとすごく疲れる。両ひざが上がっている状態で長時間バランスを保つのは難しい。これが坐蒲を使うとスッと腰がたち自然と背骨が伸びるのだ。両ひざが床につき、お尻と三点で体を支えることにより、しっかりとバランスを保つことができるのだ。この時点ですでに背筋を伸ばした爽快感を感じることができる。そして知らず知らずにゆっくりとした複式呼吸をしていた。このゆっくり深く呼吸をする複式呼吸こそ坐禅で最も大切な要素らしい。
いざ坐禅に挑戦してみる。何も考えない状態にするというが、なかなかそんな状態にするのは難しい。だから呼吸に意識を集中させるのだが、ふっと呼吸にしか意識がいっていないことがわかる。実際にストレスが軽減されただとか、頭がリフレッシュされたとかは実感としてそこまで感じたわけではないのだが、テレビやスマホを見ているとあっという間に経つ12分という時間が、とにかくゆったりと流れ、それがなんとも心地よく爽快なのだ。
ただ、まだ初心者中の初心者、なかなか静寂の中で行うのは難しい。そこで「禅音」なるアプリを使っている。波音や焚火、水琴窟の音など心を癒してくれる音が流れ、心地よく集中の手助けをしてくれる。坐禅のやり方なども解説されていてとても便利だ。「雲堂」というアプリでは、動画で坐禅の方法も紹介してくれている(どちらのアプリも無料)。少しずつ時間を延ばしながら、坐禅を楽しみたいと思う。
心身ともに健康である一年を目指して
そしてもう一つ坐禅と共に行っているのが、ヨガのポーズの王様とも呼ばれるシールシャ・アーサナだ。ヘッドスタンドのことだが、坐禅と共に朝晩3分ずつ行っている。意識を集中し、バランス力や体幹を養うのには最適のポーズだ。そしてなによりこのポーズをすることで天地が逆になり頭部への血流を促進させ、脳内の毛細血管にこびりついた汚れなどを浄化する働きがあるそうだ。これをすることで自律神経が整い、循環器系、内分泌系、消化器系などが正常に働き、健康的で理想の状態に戻っていくらしい。
ヨガの伝道師の中にはこのポーズを30分、1時間とする人もいるそうだ。さすがにそこまでするのは至難の業だが、体を見つめなおすにはとてもいいポーズだと思っている。40を超えるとどんどん体の変調をきたすという。毎日少しずつでも意識を集中し体を見つめなおす時間をもって、心と体を健康な状態に保ちたいと考えた年始だった。
撮影・文/楠井祐介