汗の悩みを徹底的に調べます。
夏は女性を悩ませる美容トラブルが続出の季節。特に「汗」で困るという読者の中でも、「腋汗」や「私ってワキガかも…」と悩む女性が多いよう。
女性の汗やニオイに、フィジカルとメンタルの双方から真剣に向きあう銀座Mitaクリニックの三田麻津子先生に取材しました。
汗は生命・健康維持に大切な役割を果たしている。
――基本的な質問から、汗の役割とは?
「汗は私たちの体温を適切に調整する大切な役割を担っています。夏に汗を大量にかくのも、気温が高くなり上昇した体温を下げるため。体全体から汗は出ていますが、脇にかく汗は、特にニオイが気になったりと、女性には厄介なものですね」
汗は無臭。「脇汗のニオイ」と「腋臭症(えきしゅうしょう)=ワキガ」は別!
――でも、汗のニオイに悩んでいる人も多いですよね?
「実は、汗そのものは無臭です。汗臭いと感じるのは皮膚についている雑菌や私たちが持っている常在菌、衣服についたほこりや汚れなど、様々なものに汗が触れることでニオイが発生します。
一方、遺伝が原因のことが多い『腋臭症』は、上記とは別の汗腺から出ている汗が原因で、治療には手術が有効です。汗を出す汗腺には2種類あります」
【エクリン腺】汗が雑菌と触れ、長時間経つと、汗臭いニオイに。
「『エクリン腺』は体全体にある汗腺で、体温調節の役割を担います。ここから出る汗はサラサラしていて無臭。99%は水分ですが、肌の雑菌や毛穴の汚れなどと触れて長時間経つことでイヤなニオイが発生します。
汗をかいたら放置せず、すぐに拭き、入浴やシャワーで清潔を保つことが大切です。市販のデオドラント製品を上手に使えば気にならないはず。脱毛も効果的です。
患者さんの中には、汗を気にするあまり一日に何度もシャワーを浴びたり、ゴシゴシとボディソープで洗う人がいますが、洗いすぎは皮膚のバリア機能を乱し、肌が本来持っている自浄成分まで流してしまうので、乾燥や肌荒れなどの原因に。多くても洗うのは日に2回くらいにとどめ、刺激の少ないソープで優しく手のひらで洗うだけでも十分です」
【アポクリン腺】ワキガの原因。専門医による診断、治療がおすすめ。
「『アポクリン腺』は、腋、耳、乳輪、陰部、へそなどにあり、毛穴に付随しているものです。汗そのものは無臭ですが、ここから出る汗には脂肪やたんぱく質、アンモニアなどが含まれています。
腋臭は『腋臭症(えきしゅうしょう))と言って、アポクリン腺から出る汗が原因です。遺伝が原因のことが多く、耳垢が湿っている場合、『腋臭症』の可能性が高いですが、必ずしもそうとは限りません。診断、治療には専門医に相談することをおすすめします。
また、『腋臭症』は腋の衣服にひどい黄ばみが出ることも。エクリン腺による汗対策と同様に清潔を心がけることに加え、ボツリヌストキシンやレーザーなどによる治療が有効です」
多汗症にも用いられるボツリヌストキシン治療。
――汗のニオイや多汗症に有効な治療とは?
「汗に関する医学的なアプローチとして『ボツリヌストキシン治療』が多く行われます。
ボツリヌストキシンは筋肉の働きを抑える働きがあり、これを脇など汗が気になる部分に注射することにより、『汗を出す』という指令を遮断して、汗を抑えます。腋汗が衣服に浸透して仕事にまで影響するなど、深い悩みのある方にはおススメです」
奥深い「体臭」問題の根源は心にある!?
――ニオイにまつわることで、気になることはありますか?
「男女問わず、多くの患者さんを長い間診療してきましたが、ニオイや汗にまつわる悩みはとてもデリケートです。
客観的には気にならなくても、自分の体臭が気になったり、過去に恋人から指摘された一言がトラウマとなり恋愛・対人恐怖症になってひきこもってしまったり。
一人一人のお話をじっくり聞き、治療以外のメンタル面でも寄り添いながら一緒に解決策を考えていくことが大切だと感じています」
ここを深掘り!
ニオイに関する問題は人それぞれ。これからは特に汗が気になる季節。清潔を心がけ、適切な対処をして快適に夏を過ごしたいですね。
取材・文/三尋木志保