イガリシノブさん ヘア&メイクアップアーティスト(BEAUTRIUM)
数多くの女性誌で連載を持ち、雑誌や広告のヘアメイクなど幅広い分野で活躍。おしゃれで可愛い顔をつくる“イガリメイク”は、多くの女の子の憧れとして話題を呼び、著書『イガリメイク、しちゃう?』『裏イガリメイク、はいどうぞ』(ともに宝島社)は累計17万部を超える人気ぶり。2018年には自身のコスメブランド「WHOMEE 」を立ち上げ、ますますパワフルに活動の幅を広げる。
美のプロだからこそ知る、きれいの裏側を覗く好評連載。今回ご登場いただくのは、女の子の可愛さを引き出す“イガリメイク”で大人気のヘア&メイクアップアーティストのイガリシノブさん。独自の感性とセンスのよさでおしゃれ顔を生み出す達人が注目する、今季のトレンドメイクとは? 色選びやアイテム使いなど、早速マネできるアイディアを教えてもらいます。
前編ではスキンケアの大切さを教えていただきました。 では、現場でのケアとメイクの比重は?
「スキンケアから下地までが仕上がりの80%を決めるという話を前回させていただきました。現場ではその前段階のコンディションづくりからが仕事だと思っているので、モデルさんやタレントさんから頼まれたら、手や足などのマッサージもしています。
マッサージの学校にも通ったことがあって、基本の勉強もちょっとしたんですね。ただ、マッサージ練習のモデル役が年配のおじさんだったので、え、やだなとあまり長くは通わなかったのですが……。1時間半くらいかけてマッサージ、スキンケア、メイクアップと行いますが、スキンケアとメイクだけなら1時間で終わるようにします。私がメイクされる側だったら、時間が長いと疲れちゃうと思うので。
ほかにもミュージシャンの方のライブのヘア&メイクでは寝てもらって全身のマッサージもしますよ。現場でミュージシャンの美容周りをサポートするのはヘア&メイクしかいないですし、体のメンテナンスだけでなく、メンタルを整え、モチベーションアップまでサポートするのが役割だと思っています」
下地が大切というお話。今秋冬のベースメイクについては?
「今はとにかく素肌感のある薄づきの肌が旬。アイテムのおすすめはトーンアップしてくれる下地とピンクみのあるファンデーションです。ピンクを含んだファンデーションを顔の中央部にのせると柔らかい白みを帯びた印象がきれいにつくれ、もともとの自分の肌色が自然とシェードの役割に。立体感のある顔立ちが難しいテクニックもなく、簡単につくれますよ。このとき、全顔に塗るのはNG。顔の高さを出したい部分に塗るのがポイントです。
さらに肌をトーンアップしてくれる下地で明るく整えるのもマストです。塗るときはこめかみ付近にもきちんと塗ることで、肌がなめらかに整い顔の印象もパアッと華やかになります。これは大人の女性にもぜひ試してもらいたいですね」
「今どきの肌づくりには下地がポイント。ワントーン明るくみずみずしい肌に仕上がります」。イガリさんプロデュースのコスメブランド・WHOMEE。秋の新作トーンアップUVベースSPF30 PA+++(30g ¥2,000・税別/フーミー)は、くすみや色ムラを自然にカバーしてくれる。
では、今秋のメイクトレンドは?
「この秋はアイメイクがまた復活の予感。春先から目元が少しずつ色づいてきたので、アイシャドウで色を楽しむのももちろんいいですし、カラーマスカラを投入してみるのもすごく可愛いです。ずっとマスカラレスなメイクの人気が続いていましたが、印象がガラッと変わって新鮮ですよ。
アイシャドウの色みはテラコッタ系の人気はまだまだ続くと思いますが、最近はピンクも可愛いですね」
カラーマスカラは何色がおすすめ?
「よく使っているのがピンクです。アイシャドウをつけずにカラーマスカラだけのメイクはとても可愛いのですが、おしゃれ過ぎてちょっとハードルが高いかな。おすすめの使い方はアイシャドウからだんだん濃くなっていってマスカラが一番濃いというグラデーションをつくること。キワに入れるアイラインの代わりに、マスカラで締めてあげるようなイメージです。なじみよく仕上がるので取り入れやすいですね」
WHOMEE新作の中でも、特に注目はカラーマスカラ(¥1,500・税別/フーミー)。
写真はテラコッタピンク。このほかチョコレートブラウン、ストロベリーレッド、キャロットオレンジの全4色。
秋の新色は5色。手前左からイエローブルー、レッドピンク、シルバーピンク。奥左からアイボリーブラウンとオレンジブラウン。アイシャドウパレット(¥1,800・税別/フーミー)
イガリさんが欠かせない、自腹買いコスメは?
「今は可愛いコスメがいっぱいあるから迷いますね〜。どれも可愛いものだらけ。強いていうなら、リップはRIMMELのもの、アイシャドウはNARSのもの、チークはコフレドールのものが好きですね」
それぞれ好きな理由は?
「色みの出方と簡単に使える点です。私、3Dで顔を考えるのが好きなんですよ。どこにどの色を置いたら、どういう風に顔が見えてくるというのを想像してつくるのが好き。それが簡単にできるのがこの3つのブランド。
特にNARSは学生の頃から大好きなブランドです。あとクレンジングは前編でお話しした江原道のクレンジングウォーターのほかにはクリームタイプのものを愛用しています。ジェルタイプでさっぱり洗い上がるものより、肌にやさしくしっとりと洗えるものを選んでいます。
私、自分の肌が弱いからあまり試せないんですよね、だからコスメにはそこまで詳しくはなくて化粧品オタクではないんです。顔オタク、顔のバランスオタクです」
どう可愛く見えるかを研究するのが好き?
「そうなんです。イガリメイクの血色チークも、ここにポワッと血色感があると外国人のような立体感が顔に生まれるなと思ったのがはじまり。顔の見え方研究が好きなんです。だから、例えば、シミを薄くするコスメを教えてくださいと聞かれても、コスメには詳しくないから、シミはレーザーで取ったほうが早いって思っちゃうタイプ。仕事柄怒られちゃうんですが(笑) でも、先ほどのベースメイクの話とつながりますが、隠して隠して重たくなるメイクが、今は一番残念だから」
シミがうっすら透けても、隠すよりいい?
「はい、今はそのほうが優先。とにかく薄く軽やかな肌を目指してほしい。ベースの肌が変わるとそれだけで今っぽい雰囲気になれますよ。おすすめのコスメはそんなに多くはないのですが、コレいいよ!と雑誌で取り上げていただいた中で、NARSのアイシャドウ『ハードワイヤードアイシャドウ5334番』は大ヒットしたそう。日本の市場のものは完売し、海外の市場で売られている分を回しても売り切れちゃったとか。そんなこともあり、『自分の提案が一般の女の子たちから求められているんだ』と、ひしひし感じて。私のことを頼ってなんとかしたいと思っている子に対して、コレがあるといいよというコスメを提案したくて立ち上げたのがWHOMEEなんです」
可愛くなりたい女子たちのお守りのような存在、ですね。
「そうなれたらいいなと思っています。『イガリさんみたいなメイクをしてみようかな』という時は好きなコスメでにマネしてもらえたらいいけれど、『イガリさんにどうにかしてもらいたい、イガリさんのメイクのすべてが好きです』と言ってくれる女の子たちのためにつくりました。
前回お話した今が一番楽しいのも、一般の子たちが可愛くなれるお手伝いができていると感じるからでしょうか。ショーやセミナーなどもっと多くの方にもっともっとお会いできたら嬉しいですね」
最後にそのパワーを支える、メンタルを整える方法を教えてください。
「例えば、落ち込んだ時は無理に元気になろうとしません。家から出かけない、友達とも会わない。どうしても誰かに会うと愚痴ってしまうし、アドバイスをもらっても反抗したくなってしまうので。とことん落ちたら、あとは上がるだけ。そしたら友達と歌って発散! です。友達と仕事に支えられて今までがんばってこられたので、これからも大事にしていきたいと思っています」
パワフルにひたむきに女の子を可愛くすることに邁進するイガリシノブさん。
イガリさん流のエッセンスを感じていただき、明日のきれいに役立てていただけたらうれしく思います。
撮影協力/BONDI CAFÉ(ボンダイカフェ)
東京都港区南麻布5-15-9 パルビゾン70 1F 03-5422-9449