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MAKEUP】【COLUMN

2019.10.12

江戸のおちょぼ口、平成のふっくらリップ、令和は…!? 時代変われば美人も変わる。

なんのためにスキンケアをして、メイクをするの? 「キレイになるため!」。それなら、なんでキレイになりたいの? 「え!?」 そう思ったみなさんにおすすめの連載コラム。化粧文化研究家の山村博美さんが、キレイをあらゆる角度から紐解きます。

唇の美意識は平成30年間で大きく変化した!

最近、小さく可愛い口を意味する「おちょぼ口」という言葉を耳にしなくなりました。その一方で「ふっくら」「ぷっくり」「ぽってり」など、唇の厚みや立体感を表わす言葉がメイクの特集記事にひんぱんに出てきています。

今や石原さとみさんのような、大きくて肉感的な唇が可愛いと言われる時代。唇をボリュームアップするために、ヒアルロン酸を注入するプチ整形だってあるほどです。

そう、口の大きさや唇の厚さに対する美意識は、ここ30年で驚くほど変わりました。昭和時代までは、大きな口や厚い唇は欠点とみなされていて、メイクで小さめに修整するのが普通でしたから、大変な違いです!

日本では、伝統的に口は小さい方がいいと言われてきた!

歴史的に見ても、日本の絵巻や浮世絵に登場する女性はみんなおちょぼ口。日本では伝統的に、口は小さい方が美人でした。とはいえ、小さすぎると薄幸そうに見えるので、ほどほどがベスト。大きな口や厚い唇は品がないと思われていて、江戸時代の化粧の本には、あらかじめ唇を白粉で塗りつぶし、りんかくより2、3割内側に紅をつけて小さく見せるテクニックが記されているほどです。これだと今よりかなり小さい口になりますよね!

江戸時代に生きる女性にとって、化粧や髪をきちんと整えるのは女としての礼儀でしたが、目立ったり派手なのはNG! たとえば大きな口に紅を濃くつけるのは、人を喰ったようで醜いと考えられていたのです。男尊女卑の社会では、清純でひかえめに見える小さな口の方が男性ウケしたのでしょう。

スーパーモデルが教えてくれたのは、個性を生かすリップメイク💄

戦後になっても、その流れを引きずってきた小さな口の美意識が変わりはじめたのは、1990年代。日本にスーパーモデルブームがやってきた頃からでした。

クラウディア・シファーやナオミ・キャンベルなど人気モデルは「これが私の個性よ!」とばかりに唇を大きく厚く描いて、自身の魅力をアピールしたのです。それがとてもカッコよくて、彼女たちを美のアイコンにした90年代後半の女性誌では「今めざすべきはナオミ風メイク」などと、厚みのある唇を強調するモードメイクが紹介されるように。

そして2000年代、「目力ブーム」を皮切りに女子力高めのメイクが流行するにつれ、ふっくらした「たらこLIP」が癒し系、色っぽいなどと言われ、リップメイクの表舞台に。

時代を味方につけて、それまでの欠点が魅力に変わったんですね。

キャリアと女らしさを両立させるのが、現代女性のスタイル

ちょうど1990年代後半から2000年代にかけて、ツヤ感や立体感を際立たせるグロスやリキッドタイプの口紅が次々と発売されたことも、ふっくら唇の流行を後押ししています。

当時、注目された唇美人は、資生堂ピエヌのCMに出演した伊藤美咲さんや花王オーブの井川遥さん。特に井川さんは、大きく厚い「たらこLIP」の持ち主でしたが、ぷるぷる感のある唇は、彼女の魅力を一層引き立てていましたよね!

平成以降、今も続くふっくら唇の流行。働く女性が増えた今、キャリアだけじゃなく女らしさも大切にしたいと考える現代女性の自然体な生き方が、口元にも表れているのです。

文/山村博美