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COLUMN

2019.08.29

ボディクリームはスキンケアと心得よ。

ボディクリームというと、お年頃の女が「彼氏や不測の事態に備えて、全身のお肌を磨き上げておりますっ」という、わりとセクシーなニュアンスがあるアイテム。申し訳ないが、乾燥肌ではないワタクシは、ボディクリームについて、かつてはそういったイメージを持っていた。隣に座って酒を飲んでいると、そこはかとなく良い香りが漂うゲイの美中年友人は、常に若い恋人がいるが、「コロンじゃなくて、ボディクリームが現場ではモノを言うのよ!」と、豪語していたしな。

 

しかし、かかりつけの整体師の話を聞いて、そのイメージは一変してしまった。彼は私の施術をしていた時にこうアドバイスをくれたのである。「ユヤマさん、肌、乾きすぎ。身体の不調には、実は皮膚も関係しているんですよ。肌が乾燥していると、それは身体の内部に良くない影響を与えるので、ボディクリームを塗ることを習慣化して下さい」と。彼の話によると、日本でのボディクリームは美容面が重視されるが、乾燥が激しいヨーロッバや中東の砂漠地帯では、全身の肌を潤すスキンケアは、養生や健康面から伝統的に求められているのだという。

それで合点がいったのは、ヨーロッパのホテルのアニメティー。宿にカネをかけないことで有名な私は、よくB&Bや安宿に泊まるのだが、そういった所に置いてあるのは、タオルと石鹸、そして、ボディクリームなのである。「いや、最初に歯ブラシとか、シャンブーとコンディショナーでしょ」というのが、日本人の常識だが、ボディクリーム優先の欧米。そういえば、現地のスーバーマーケットの品揃えもそれを裏付けており、日本では一区画を締めるシャンブー&コンディショナーのラインナップは貧弱で、その代わりにボディクリームは種類豊富なのだ。イスタンブールの伝統サウナのハマムで、白人の女の子が店員に「(入浴後は)肌がちくちくするから(itchy=痒いを連発)、ボディクリームをくれ!」と騒いでいたこともあったっけ。

 

というわけで、セクシーライフには、人生とんとご無沙汰なワタクシも、ボディクリームを塗ることが習慣化している。おかげさまで全身はじっとり潤っているのだが、あるとき気がついたのは、若い印象を他人に与えるのに、肌の質感というのは大いに関係がある、ということ。人間の視覚とは恐ろしいシロモノで、無意識のうちにいろんな情報を拾ってしまう。肌の露出が多くなる夏では、実はほうれい線のシワよりも、面積の大きい身体全体の肌のカサカサ具合の方が「老けた」印象を作ってしまうのだ。ノースリーブから出た二の腕は太さやたるみを気にするよりも、ボディクリームでお手入れしてピカピカにした方が、若々しさを伝えられる、ということです。

さて、私が愛用しているのは、ローラ・メルシェの<ホイップトボディクリーム アンバーバニラ>。官能的なアンバーと可愛らしいバニラがミックスした香りは、巨乳の美少女戦士みたいに、ニッポン人男子の萌えを刺激しそうなセクシーさを思わせるが、前述した通りに今のワタクシにそういう「現場」はなく、あくまでスキンケア。この逸品に出会ったのは、某テレビ局のメイク室。鏡の前には基礎化粧品が並んでいるのだが、その片隅にコレを発見し、試させてもらったとたんにその質感と香りの虜になって、速効ネットで注文。香りの持ちがちがうところが、プチプラではなくブランドメーカーの証しでもあり、満足度を考えてみるに、実はコスパはいいのである。

 

国産では、資生堂の<アユーラ メディテーションボディークレーム> がいい。たぶん世界で指折りにストレス度が高いと思われる日本人女性に向けて、香りによるリラックスや癒しを提供してきたブランドのそれだけあって、塗ったそばから「私の身体だけ、ノルウェイの森」状態(意味不明)。

忘れてはならないのが、ボディクリームを塗るときの自身の手のひらでのボディタッチ。クリームを塗る度に「ワタシの身体ここにあり」感を日々実感することは、このネットコミュニケーション偏重の時代に、どれだけ精神の安定剤になることか! さあ、健康な人生のためにも、一本、お気に入りを見つけましょう。

文/湯山玲子 イラスト/ヒラノトシユキ

PROFILE

湯山 玲子(ゆやま・れいこ)

湯山 玲子(ゆやま・れいこ)

著述家・ディレクター

出版社勤務を経て、フリー編集者に。書籍の編集や執筆、自身のファッションブランドのプロデュースなど幅広い分野で活躍。清々しく潔い発言で人気を博す。大の美容好きで、最近は新製品化粧品のリサーチのために百貨店のカウンターにも足繁く通う。http://yuyamareiko.blogspot.com/

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